映画『ルパン三世 THE FIRST』

(公式ホームページ)
初のフルCGで映画化されたルパンシリーズ。「THE FIRST」というのは今後もフルCGでの作品を作っていく意思表示なのかどうなのか。
ストーリーとしては、
ルパン三世(声:栗田貫一)が次に狙ったお宝は、「ブレッソン・ダイアリー」と呼ばれる代物。祖父であるルパン一世が盗みに失敗したと言われる逸品だ。しかし、盗みに入った現場で女子学生・レティシア(声:広瀬すず)の横やりが入って、さらにいつも通り(?)峰不二子(声:沢城みゆき)に横取りされ、盗みは失敗に終わる。
しかし、ただでは転ばないのがルパン。相棒の次元大介(声:小林清志)、石川五ェ門(声:浪川大輔)にブレッソン・ダイアリーを追うことを反対されたルパンは、レティシアの所在を突き止めると「考古学者になるのが夢」と語る彼女とコンビを組むことに。しかし、レティシアの裏には未だにヒトラーを信奉する組織「アーネンエルベ」と深い繋がりを持つ考古学教授・ランベール(声:吉田鋼太郎)と、そのランベールに指示を出す男・ゲラルト(声:藤原竜也)がいて――
というお話。
率直なところ、脚本が悪い。どこが悪いのかというとアレコレ書くと長くなりそうなので箇条書きにしてみる。
・レティシアの立ち位置が不鮮明
⇒考古学を学びたく最高学府のボストン大学に進みたいために盗みまでしたかと思えば、時には人道的なことを言ったり、ルパンを利用したかと思えばルパンに強い愛着を持ったりと、コロコロコロコロ立ち位置が変わってしまうのでヒロインとして、キャラクターとしてとても嫌悪感がある
・ランベールとゲラルトの存在意義が分からない
⇒もちろん、ラスボスであり真相を知る者としての立ち位置ではあるのだが、ランベールはレティシアを引き取ってからの十数年んで情が生まれた割には考古学者としての名誉が強すぎるし、ゲラルトはそもそもなんでいるのかが分からないほどバックグラウンドも語られなければ、敵としての脅威もない
・無駄にカリオストロなど旧作を意識した言動
⇒ファンサービスと言えばそれまでだが、この作品には上手くマッチしてなかったと思う。
・ルパン一味の活躍の薄さ
⇒活躍したのは不二子くらいか? 次元、五ェ門に至っては出番すら少ない。それが一概に悪いというわけではないけれど、その場合にはそれを覆すくらいのルパンやゲストキャラの活躍がなければならない。しかし、それすらない。
ざっと挙げただけでこんな感じ。痛恨なのはやっぱりヒロインレティシアだろう。ビジュアルが中途半端。もっと可愛いとか、綺麗とか極端に振っても良かったんじゃないか。その上で彼女のスタンスと言うものをハッキリさせてほしい。自分の進学のため、夢のためなら悪事すら働くかと思えば、人道的・倫理的なことを口にするシーンもあって、その立ち位置が良く分からない。人ってそんなものと言われればそれまでだが、これはエンターテインメントであり、映画なのだ。キャラクターとしてはもう少し割り切ってくれていた方が、観覧者としては肩入れもしやすい。
っていうかルパンたちとスゲー仲良くなっていたけどその過程が全くないから違和感しかないんだが…。
そして声も良くない。広瀬すずさんの演技力は正直、声優向きじゃない。他のゲストだった藤原竜也さん、吉田鋼太郎さんが案外そつなく声優として声をあてられていただけに余計に広瀬さんの不得手さ、下手さが際立った印象。話題性は認めるし、いかにルパンとはいえそのゲスト声優のためだけにオーディションなんて出来ないだろうから指名だったんだろうけれど、もう少し音響監督などは吟味した上で人を選んでほしかった。
私ならストーリーはもっとシンプルにしたい。あくまでベースはブレッソン・ダイアリー(そもそもこの謎を映画の半分もいかない内に解いちゃうのはダメだろ)。その存在と、謎を解くことにもっと時間を割く。その上でブレッソン・ダイアリーを追う中、レティシアがルパンや次元らとも仲良くなっていく。けれど、その正体は敵(ランベール)のスパイで手下。ルパンがブレッソン・ダイアリーを手に入れたところで横取りして、ルパンらも捕えられる。ルパンを始末しようとするランベールに対して、情が移ったレティシアがなんとか阻止。ルパンたちにその心にある純粋な気持ち、善良な気持ちを指摘されて改心し、ルパンらとランベールと対峙して決着をつけてENDでは考古学者を目指します!、くらいで良かったんじゃないかな、と。
とにかくあれもこれもと入れ込み過ぎた。
さて、売りの一つであったフル3DCGだが、こちらはかなり完成度が高い。アニメ的でありながら、そこに3DCG的な要素がしっかりと入っていると思う。最初は違和感もあるだろうが、私は十分くらいで違和感が消えた。
この作品が従来のセル画などの手法で作れないのかと問われれば答えはNOだ。そしてたぶん本気で労力とお金を惜しまないならセル画で作った方がたぶんもっと良い画質というか、味のある画質だったと思う。けれど、コストパフォーマンスを考えた時にこのクオリティのものが出来るなら3DCGという選択肢は十分にアリだとも思う。
評価は、★★(2点 / 5点)。3DCGの完成度は高い。あとは脚本の完成度を上げて欲しい。
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