東京近江寮食堂

著:渡辺 淳子 発行元(出版): 光文社
≪あらすじ≫
定年退職を間近に控えた妙子は、十年前に消えた夫の行方を探すため東京にやってきた。慣れない土地でのひょんなトラブルから、谷中にある宿泊施設、近江寮にたどりつく。個性的な管理人や常連客の貧しい食生活を見かねた妙子は彼らの食事を作り始めるが、その料理はやがて人々を動かし、運命を変えていく。そして彼女自身も―。おいしくてせつない、感動長編。
(裏表紙より抜粋)
感想は追記からどうぞ。
≪感想≫
この夏のキャンペーン「乃木坂文庫」で手に取った一冊。普段、ミステリ以外はほとんど読まないけれどあらすじに惹かれて読んでみた。
それぞれの人間模様が上手く絡んだ一冊。失踪した夫を探しに来た妙子が、料理を提供する代わりに格安で近江寮に泊めてもらいながら、その料理で話は進んでいく。
といっても、その料理が人々の問題を解決し運命を変えていくというのは、終盤に一つか二つある程度。いろいろ料理を作るシーンもあるが、それは自分が作る以外にも料亭に行って食べることもあるし、ただのおにぎりということもある。
でも、それでいいと思えた。衣食住とも言われるように、生きる上で大切な「食」というものを真っ直ぐに「食べるって大切なことだ」と伝えてくれている。そんな印象の一冊。
リーダビリティは高く、サクサクと展開が進むので読み進めやすいのもグッド。
ただ、料理の描写に対してクエン酸とかアミノ酸とかの用語が並ぶ部分は、確かに説明上必要だったのかもしれないが他のところの描写や文体を考えるとやや違和感。それならば妙子の職業を、それが出てきてもおかしくないモノにするとか(まぁ病院勤めではあるが)の工夫が欲しかった。
あと終盤出てきたホームレスの意味合いがちょっと薄いかな…。
評価は、★★★☆(3.5点 / 5点)。
同じ本の書評を書かれている方(敬称略)
・こみち
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