ガンダムエピオン -ライトニングカウントモデル-

まずは閲覧していただきありがとうございます。今回は、MGガンダムエピオンをコミックス『敗者たちの栄光』にカラーイラストとして出てきたIFモデル ウイングガンダムゼロ-ピースクラフトモデル-に触発され、エピオンをピースクラフトモデルならぬライトニングカウントモデルとして仕立ててみました。
それでは、よろしくお願いします。
◆ 前説 ◆
もしも、ゼクスの到着がもう少し早くサンクキングダムが崩壊せずOZを撃退出来ていたら――
もしも、ゼクスがホワイトファングに参加せずサンクキングダムを護るために戦えていたら――
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コミックス『敗者たちの栄光』に掲載されたカラーイラストの中に、ゼクスがウイングガンダムゼロをヒイロと交換せず、そのまま戦っていたらと言うIFで<ウイングガンダムゼロ ピースクラフトモデル>と言うものがある。
じゃあエピオンにIFがあるとしたらなんだろう?
ヒイロがゼクスとエピオンを交換しなかった未来か。確かにそれもある。けれど、ゼクスがホワイトファングの指導者にならない未来もあったのではないだろうか。
そんな妄想によって誕生した色違いエピオンが、この<ガンダムエピオン ライトニングカウントモデル>、別称<ガンダムエピオン マーキスモデル>である。大型ランスをコトブキヤのMSGウェポンユニット08「バトルランス」で、シールドを以前製作したMGトールギスのものを流用して再現してみた。
また今回のエピオン製作にあたり、ウイングゼロのピースクラフトモデルを参考にしつつ、色合いを<ウイングガンダムゼロルシファー>という作品を多分に参考にさせてもらっている。騎士の具現化のような近接装備しか持たないエピオンならば、より騎士らしく多少の豪華さがある方が「らしい」と感じたのだ。高貴な色とされる紫、豪華な金色を用いたのはそういうところもある。
ゼクスと、ヒイロらガンダムパイロットたちとの共闘。
正直、ゼクスはトレーズからも「つくづくゼクス(ミリアルド)はガンダムから嫌われたものだな」と言われるほどなので、IFとして考えても妄想し辛いシチュエーションではあるものの、そんな未来があっても良かったのではないかと今は少しだけ思っている。
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最後には駄文ながら、本作を作るにあたってイメージした読み物も掲載してみた。ガンプラをカスタムカラーやミキシングをする際にはイメージが大切で、時々イメージをより固定化するためにこういった文章を書いて自分の中の妄想を強固なものにする時もある。
ガンプラをカスタムカラーで塗装したり、オリジナルでミキシングビルドをしたりしたいけれどイメージが固まらないという方がいれば、こういう手法もあるのだと参考にしていただければ幸いである。
◆ ガンプラ ◆


普段はワンポイントに使うゴールドをふんだんに使用。前述のウイングガンダムゼロルシファーや、『コードギアス』シリーズのランスロットなんかを参考に、ホワイトとゴールドの組み合わせでゴージャス感を演出。


細部はTV版エピオンとは微妙に違う点も多い。

フレームは頭部と脚部をゴールドで塗装。でもこの後頭部の部分、カメラだったことを撮影し終えてから気付いた(笑

ガンダムらしく白を基調とし、さらにW系のガンダムらしくブレードアンテナはゴールドに変更。


MGらしくコックピットの開閉ギミックあり。

胸部クリアパーツはクリアブルーで塗装。

腕部。エピオンクローの展開方式が一部変更されている。


前述のようにフレーム部もゴールドで塗装。外側くるぶしの部分の小ウイングが外れやすいかな、という印象。可動させるものでもないのでガシガシと動かして遊ばないなら――あるいは遊び終えたら、個人的には接着を推奨。


ウイングはEW版の際にカトキハジメさんによって展開ギミックが追加されている。


ヒートロッド装備シールド。


一部引き出すことで可動域を広げられるようになっているが、強度的には(特に塗装した場合には)不安が大きい。実際、一つは破損してしまった(苦笑


ビームソード。TV版よりも大型化し、装飾も派手に。塗装による塗りわけで派手さをさらに強調。


有線ケーブルが付随。


ビーム刃もクリアパーツで付属。薄くクリアーブルーを吹いている。
アクションパターン












両手持ちもカッコよく決まる可動域。


ヒートロッドも「表情」がつけやすい。動かすの怖いけど。
◆ MA形態 ◆


MA形態。固定は新しめのキットなのでしっかりされているが、不安要素もちょっとあるかなという感じ。

足は広げられるので広げた方がソレっぽい


EW版特有の機構として足が開く。漫画ではここが吸気口?になって、ヒートロッドをさらに過熱しているような印象もあったが…。


ディスプレイに乗せて。


観る角度によっても多少印象が変わる。



TV版と大きな違いは、リアアーマーが閉じて、ビームソードがサプライヤーごとシールドに取り付けられ、そのシールドが胴体に突き刺さっているところだろう。正直、こっちの方がダサイと思うのは思い出補正かな?(笑

エピオンクローはここまで出る。
◆ オリジナル ◆


ウイングゼロ ピースクラフトモデルを参考に大型ランスとラウンドシールドを追加した、ガンダムエピオンライトニングカウントモデル。


大型ランスはコトブキヤから出ているMSGウェポンユニット08「バトルランス」を使用。特に手を加えていないため、ややMGエピオンと比べると小ぶり感もあるが、それでも十分なレベルだろう。




ただ保持力は正直ゼロに等しい(笑


改造すればいいのかもしれないが、エピオンのマニピュレータだとダボがあるので上手く保持出来ず、バトルランス側の持ち手もエピオンの前腕が太すぎて上手くはまらない。


それでも十分カッコいいのだが。


ラウンドシールドは以前作ったMGトールギスのものをそのまま流用し、リペイント。
◆ カラーレシピ ◆
カラーレシピです
本体白:Mr.カラースプレー・ホワイト
本体紫:ガンダムカラースプレー・MSパープル
本体金:Mr.カラースプレー・ゴールド
フレーム:ガンダムカラースプレー・MSファントムグレー
センサー類:Mr.カラースプレー・クリアーブルー
スミ入れはタミヤの市販のスミ入れ塗料(グレー、ブラック)です。

◆ 総評 ◆

ガンダムエピオンライトニングカウントモデルいかがだっただろうか。
これでガンダムWのガンダムは(ヘビア改、サンド、シェンロンと素体がほぼ同一のものを除けば)全て手をつけたことになる。そもそもエピオンはヒートロッドを作るのが絶対に面倒くさいだろうなと思って手を出していなかったのだが、ようやくエピオンのイメージが固まったので作ることが出来た。
白を基調としつつ、ゴールドとパープルの組み合わせはなかなかなゴージャス感を出してくれた。また、腰部アーマーやウイング部の配色パターンを変更することで、より一層の「ガンダムらしさ」を観ている人へ与えるカラーリングと色情報量の増加に繋げることが出来たかなと自負している。
デカールも白を基調としたので使えないものが半分以上だったが、それでも上手く組み合わせてバランス良いデカールになったのではないかとも思う。
オリジナル装備に関してはもうひと工夫、ふた工夫くらいしたい気持ちもあったが、一先ずは無難にそれなりな形で纏まってくれた。
そこを含めて今回は、配色パターンの変更が上手くハマってくれたと思っている。
ガンプラ取説風妄想インスト
注意事項)ここで書かれていることは製作者が従来の設定をベースにマスターグレードのインスト風に考えた「妄想」設定です。決してサンライズおよびバンダイを始め公式の設定ではありませんので、説明文を鵜呑みにしないで下さい。
解説
頭部 -HEAD UNIT-

モビルスーツ(以下MS)において頭部はカメラやセンサーなどを有する重要部位の一つであり、ガンダムエピオン(以下エピオン)にとってはウイングガンダムゼロ(以下ウイングゼロ)同様にゼロシステム(エピオンシステム)を稼働させる上で胸部サーチアイと並び欠かせない部位である。ウイングゼロと比べ、頭頂部のメインカメラ、両目にあたるツインアイ、さらに後頭部に三基のサブカメラを有しており、サーチアイ、後述する脚部のモビルアーマー形態(以下MA形態)用カメラアイと併用することでその情報収集能力はウイングゼロよりも高かったとも言われる。
エピオンの頭部に武装が施されなかったのはトレーズの趣向とも言われるが、実際にはウイングゼロが武装の積載による容量圧迫と運用による放熱によって収集する情報に誤差を生じさせないため頭部に武装を設けなかったことと同じ理由で、エピオンもまた頭部に機関砲(バルカン砲)などは一切有さない。
腕部 -ARM UNIT-

ウイングゼロ含め他のコロニー製ガンダムと比べても一回り大きな腕部は、主武装である<ビームソード><ヒートロッド>を軽々と振り回すパワーと精密にコントロールする繊細さを兼ね備える。そのパワーはウイングゼロの140を上回るアビリティ数値150を有し、ガンダムヘビーアームズの腕部をへし折ったガンダムサンドロックと同等である。
また腕部にはMA形態時にライディングギアとなるエピオンクローを有する。一説には格闘戦時にその名の通り「クロー」として機能するとも言われるが、その射程を踏まえるとMA形態時にすれ違いざまの攻撃程度は可能かもしれないが、その実用性には疑問が残る。
胸部 –BODY UNIT-

胸部に、メインカメラやツインアイで収集し切れない情報を獲得するためのサーチアイが設けられている。これはゼロシステムを正常に動かすためのハードウェア的処置ではないかと言われるものだ。加えてエピオンの胸部冷却装置はウイングゼロのような開閉型ではなく装甲版を兼ねるプレート型となっていおり、強度を補っている。
加えてコックピットは専用のものが開発されている。頭部に専用データヘルメットをかぶり、それをデータ転送ケーブルと繋ぐことでゼロシステムを起動させ、機体を制御する。しかし、MA形態での巡航時や非戦闘時ではヘルメットを外し、設置された大型モニターによって動かすことも可能であった。この専用コックピットはトールギスIIIで試作・運用されたものとされており、AC196年の際にはトールギスIIIが同一のコックピットでデータヘルメットを用いず実戦に投入され問題なく戦闘行動を行っていることから、エピオンでもゼロシステムがOFFの場合には同様のことが可能だと推察される。
また脇腹の部分にサブスラスターを有し、姿勢制御能力を高めている点も他のガンダムには見られない点と言えよう。
腰部 -WAIST UNIT-

腰部も同様に大型化しており、ハイパワーを支える一端となっている。加えて言うならば腰部は右腰に<ビームソード>用の専用小型ジェネレータが接続されており、ウェポンプラットフォーム的な役割も担っていたとされる。
MA形態時には腰部フレームが大きく可変するのが特徴だ。その際には見た目だけではなく、内部フレームも組み替えられており、スラスター推力やプロペラント消費効率が向上することでより長距離巡行に適した機体構造になっていたとされる。
脚部 –FOOD UNIT-


機体が一回り大きいことを如実に示すのがこの脚部ユニットである。他のガンダムと比べても大きく太い脚部は一見すると格闘戦において重要な敏捷性を損なうように見えるが、実際にはそれによる重量増加は突進の際にさらなるパワーを生み出し、敏捷性は胴脇や腰側部のサブスラスターによって十二分に賄えている。
ただそれ以上に脚部はMA形態における機首としての役割が大きい。つま先の部分に専用のMAカメラアイが設けられているほか、脚部の膝やくるぶしの部位にある突起は格闘用ではなくMA形態時における大気圏内での空力制御、整流効果のためである。
バックパック –BACK PUCK-

背部はメインスラスター二機とサブスラスター、ウイングバインダーによって構成されている。これらによって生み出されるスピードは、ウイングゼロと同等のアビリティ数値160であり、MA形態においては内部機器の組み替えにより、ウイングゼロのネオバードモードを凌駕するスピードに至る。

ウイングバインダーから伸びる大型ウイングは、通称<エピオンウイング>とも呼称される。ウイングゼロのような展開機能こそ有さないものの、二か所の可動域を有することで「節」のように曲げられるほか、最大推力時にはさらに各部がスライド展開することで圧倒的加速性能を機体に与える。
モビルアーマー形態 –MOBILE ARMOR mode-

本機の高速移動および長距離巡行形態。「鳥」のような可変後の姿を持つウイングガンダムおよびウイングガンダムゼロとは異なる可変機構となっており、下半身を上半身の背中部分へと折り畳み「双頭の竜」に見えるという一見すると異質な可変機構ではあるが、単純に折り畳むだけではなくその際に内装機器が組み換えられることでエネルギー効率が向上。機体本来の高い機動性をさらに高めた高速機動はウイングゼロをも凌駕するという資料も残る。

双頭の竜に当たる脚部にはつま先の部分にMA形態用のカメラアイを有しており、MA形態であっても高い情報収集能力を維持出来るほか、腕部クローはライディングギアとしても機能。
武装は背部のヒートロッドのみとツインバスターライフルが使えるウイングゼロのバードモードと比べると貧弱だが、それでもスタビライザーとして機能するヒートロッドはそのまま攻撃に転用することも可能であり、一説にはこのヒートロッドが最大の攻撃力と範囲を発揮するのはこのMA形態の時であったとも言われている。
余談だが、その姿はAC145年頃に登場したとされるMA<ワイバーン>に似ているとも言われるが、製造を主導したトレーズ・クシュリナーダがどこまで意識していたかは不明である。
ビームソード –Beam Sword-

腰側部に設置された専用のエネルギーサプライヤーとチューブで有線接続する大型のビームサーベル。機体ジェネレータからのエネルギーを、サプライヤー、チューブを介してデバイスに直接供給することによって、他のガンダムらが有する充電式のデバイスによるビームサーベルやビームサイズらとは比較にならない高出力のビーム刃を形成・維持することが出来る。
一説には、その最大出力時にはOZの宇宙要塞<バルジ>を一刀両断することも出来たという(一方で、それらは事前に<バルジ>内部に潜入していたスパイによって各部に爆薬がセットされており、それによって誘爆を多数引き起こしたためとも言われ、真偽は定かではない。
エピオンシールド –Epyon Shield-

ガンダニュウム合金製のエピオン専用のシールド。接近戦・格闘戦を想定しており、コンパクトにまとめられた小型盾であるが、表面に施された特殊コーティングによってビーム兵器も弾くことが可能である。MA形態時には露出してしまう、腰部フレームを隠し、後述するヒートロッドがバランサーの役割を果たすとも言われる。
ヒートロッド -Heat Rod-

エピオンシールド先端に装備された高熱化装備。OZ製MSにヒート系の武装が見られないため、おそらくガンダムサンドロックのヒートショーテルを参考にした装備と思われる。
鞭状の装備であり、灼熱の鞭は一振りでリーオーであれば3機以上を破壊出来るとされ、ビルゴであっても一振りで2機を同時に破壊した記録も残っている。変則的な格闘装備であり、MA形態時には「尾」の位置に配置され、バランサー・スタビライザーとして機能。後年には本装備が最もその威力を発揮するのはMA形態であるとも言われたほどである。
ディフェンサーランス<ヴォルテックス> - Defencer Lance

本機のオプション兵装。ハワードが、デュオのガンダムデスサイズヘルとの戦闘時にトールギスFのヒートランス<テンペスト>が弾かれ破壊されたことから考案していた強化型ランス。
高熱化させる機構をオミットし、代わりにビルゴらが装備していたプラネイトディフェンサーを参考にガンダニュウム合金で製造された大型ランスに同質の電磁フィールドを刀身周囲に展開し槍自体の強度を飛躍的に向上させると同時に電磁フィールドが敵のプラネイトディフェンサーを無効化して貫通する。トールギスを遥かに超えるパワーアビリティとスピードアビリティを有するエピオンがこの武器を突進攻撃で繰り出した際の破壊力は決してビームソードに引けを取らないとも言われる。
ラウンドシールド –Round Shield-

本機のオプション兵装。ハワードがトールギスのラウンドシールドをガンダニュウム合金で仕立て直したもの。
形状はそのままでガンダニュウム合金製になったことで耐久力が上がったこと以外の差はなく、ゼクスが扱う武器としての象徴として持ち込んだに過ぎない。ちなみに予備兵装としてトールギスのシールドと同じようにシールド裏には二振りのビームサーベルが装備されているが、ビームソードを有する本機では緊急用の装備でしかなく、投擲用ナイフのような使い方をすることもあったと言う。
◆ おまけ読み物 ◆
これはパラレルワールド、IFの物語である。
§
OZ――いや、ロームフェラ財団によるサンクキングダム攻略戦は失敗に終わった。サンクキングダムを護るように出現した白いトーラス部隊や、中東から援軍にかけつけたガンダムらによってサンクキングダムに投入されたモビルドール(MD)部隊は全滅し、OZは撤退を余儀なくされたのだ。
サンクキングダムは被害を受けながらも今なおリリーナ・ピースクラフトのもと健在である。
その最大の功労者――いや功労機は二機いた。
ヒイロ・ユイがトレーズ・クシュリナーダから受け取ったOZ製ガンダムであるガンダムエピオン。
ミリアルド・ピースクラフト――いや、ゼクス・マーキスが宇宙で回収した全てのガンダムの原型と呼べるウイングガンダムゼロ。
共に搭載するゼロシステムに翻弄されながらも、従来のガンダムを圧倒する性能を持つ二機を駆り二人はそれぞれのガンダムでOZの大部隊を退け、その後ゼロシステムに操られるがまま対決をし、南極の時と同じようにリリーナの仲介と同時に起こしたシステムダウンによって引き分けに終わった。
「トレーズが造った機体だ。俺にはトレーズの考えは理解出来ない」
「ウイングゼロはコロニーのガンダムだ。コロニー出身の君が乗る方が相応しい」
戦闘後、両者は互いのガンダムを交換した。
§
サンクキングダム北部、国境線沿いの森の地下。そこに秘密基地が設けられていた。
かつて、AC146年頃に主にサンクキングダムを守護し、自由と平和を護るために活動していた義賊「シャーウッドの森」があった場所だ。もちろんそのまま使っているわけではなく、最新の改修が施され、さらにサンクキングダムも面しているバルト海へと直結する海底ルートを有する。
そこに「シャーウッドの森」と同様の組織が結成された。
その名は「リンノルム」。
ノルウェー語、あるいは古ノルド語で海の怪物――スカンディナヴィアにおける、翼を持たない竜という意味を有する。その名の通り、海底から潜水母艦によって運ばれたガンダムらが突如出現する機動部隊で構成された私設武装組織である。
「せっかく宇宙(そら)に上がっていたのに申し訳ない、ハワード」
「構わんよ、ゼクス」
ゼクスの言葉に、ハワードはサングラスをしたまま屈託のない笑顔で応えた。
サンクキングダム攻防戦を終えたのち、ヒイロらはそれぞれのモビルスーツと共にサンクキングダムから離反し、ここを拠点とした。
理由は単純に、完全平和主義を掲げるサンクキングダムにとってガンダムを始めとする兵器とそれを操るパイロットが長居することは都合が悪かったからである。ロームフェラ財団に呼び出され、リリーナがそのことを突かれたことも一度や二度ではない。
よって、サンクキングダム庇護下の防衛部隊としてではなく、世界に対して自由と平和を掲げる義賊としての立場の方が今の彼らにとっては都合が良いと考えたのだ。当然、その主な目的はサンクキングダムの防衛ではあるが、陥落したルクセンブルク基地から今も世界各地へMDが送られている中、それらを事前に察知・撃破してMDが世界に広まることを微力ながら阻止するような活動もしている。
この地下基地と、ここから海底への移動用としての潜水母艦を提供したのがハワードだ。ゼクスから現状の報告を受けたハワードは、ピースミリオンと同じようにかつて建設していた高ステルス性能を有する潜水艇を提供。自らも再度地球に降りた。
「お前さんこそ良かったのか。ホワイトファングは是が非でもお前さんとお前さんのガンダムに来て欲しかったようじゃぞ」
「コロニー市民の痛みは多少理解出来るつもりです。しかし、私はまだ『ミリアルド・ピースクラフト』としてではなく『ゼクス・マーキス』として戦いたいのです」
宇宙で決起の準備を進めているらしいコロニー独立過激派であるホワイトファング。その代表の一人であるカーンズと名乗る男が先日、ゼクスと接触を持っていた。ゼクスをミリアルド・ピースクラフトとして――ホワイトファングの指導者として迎えたいという旨だったが、彼はそれを即断で断わっていた。
まだサンクキングダムが健在である以上、ゼクスがすべきことは決まっている。
「それにしても、ハワードにはつまらないことまで頼んでしまいました」
「ははは、いやはやお前さんらしいよ。トールギスを愛しておったし、お前さんが乗るのなら真っ赤な機体よりもこちらの方が似合うだろうて。なぁ、『ライトニング・カウント』」
ゼクスとハワードはリンノルムの地下基地で整備を受けるガンダムを見上げた。ゼクスが乗ることになったガンダムエピオンだ。だが、それはヒイロが乗っていた時とは色合いが大きく変わっていた。
真紅と漆黒のスプレンディッドな色合いではない。全体をトールギスのように純白に染め上げられ、各部はサンクキングダム近衛兵を連想させる金色と紫色に塗装されていた。
それはエピオンの装備と相まって「守護騎士」「聖騎士」のような印象を見る者に与える。ハワードがトールギス・フリューゲルのデータから今は専用のランスと円形型シールドを新造してくれているところで、それが完成すればその印象はさらに強まるだろう。
「ゼクス特佐」
背後からそう声をかけられ、ゼクスはマスクの下で眉間を寄せた。
「辞めてくれ。私も君ももうOZの兵士ではなく平和を求め戦う同志なのだ」
「し、失礼しました」
ヒイロが声をかけ、サンクキングダムの防衛部隊に囲い込んだという旧トレーズ派のOZ兵士たちも、サンクキングダムにいたままでは拙いだろうということでこちらに来ている。サンクキングダムに残っているのは、ノインら極々一部の――ガンダムパイロットとゼクス以外の精鋭のみだ。
「ルクセンブルクに降下したMD部隊がブリュッセル経由でハーグ港から出港する模様です」
「目的地はアフリカ辺りかの」
「いえ。どうやらサンクキングダム周囲への展開ではないかと推察されます」
「っ。ハワード、出撃は可能ですか?」
「当然じゃ。しかし、ヒイロとカトルを待たんでも良いか?」
ヒイロもカトルもそれぞれのガンダムと共に今は別の任でここを離れている。任務が終わればここに戻って来る予定だが、それがいつになるかは定かではない。
「問題ありません。それに、この程度の部隊を一人でどうにか出来ず、『ガンダムのパイロット』などとは名乗れないでしょう」
その声にハワードは「確かに」と笑みを漏らすと、周囲にいた面々――ハワードが宇宙から共に降りてきた整備仲間たち――に合図を送ると彼らはあわただしく動き出す。
ゼクスはもう一度、エピオンを見上げた。
「頼むぞ、エピオン。ここで完全平和主義を――リリーナの理想を潰させるわけにはいかん」
彼の声にまるで応えるように、エピオンのツインアイは光り輝いた。
NoTitle
けどそれ以上にオリジナル設定の電磁フィールドによる槍の強化が個人的には胸熱。
アンチビーム的な、00で例えるならGN粒子で強化された実体剣のような、原作にあってもおかしくないというか出して欲しかった設定ですね。