グランベルム 第2話
『私がここにいるために』
≪あらすじ≫
一夜明け、満月は新月のアパートで目を覚ます。自宅に帰った満月は新月から魔術師の事や、“グランベルム”の事について話を聞く。新月は戦う意思が無いという満月の記憶を消そうとするが、うまく術が成功しない。半ば諦め気味の新月に、満月は改めて“グランベルム”について尋ねたのだった…。
(公式HP STORY 2話より抜粋)
※長文注意
≪感想≫
◆ アイデンティティーは強さの秘密か? ◆
誰がどう見ても今回のテーマはアイデンティティー。
新月ら魔術師にとって、「魔術師であること」「グランベルムに勝利し、マギアコナトスの魔力を得て世界で唯一のプリンセプスの魔術師になること」はアイデンティティーだ。彼女たちにとって「魔術師(を目指すこと)」は、他者とは違う自己という明確なアイデンティティーなわけだ。敗北し魔石が砕けたことでアンナに切り捨てられたロサ、アンナもまた新月に勝てず歯がゆい想いを続ける。彼女たちが胸に抱く負の感情――嫉妬と憎悪と執着は、「魔術師」「グランベルムで勝ち残る」ことが彼女たちにとって絶対的なアイデンティティーだからに他ならない。
一方で満月は自分には何もないという。確かに今回含めて満月の言動には「自己」というものがないようにも見える。他の人のためにたくさんのお弁当を作り、放課後も一人で後始末をし、授業ではみんなが嫌がることを率先してやる。一見すると、新月たちにはある「魔術師」というアイデンティティーと比較すると、満月には主体性も自我もないように見える。
§
けれど、視聴者の目には違って映るはずだ。「自分の居場所が欲しい」と願う満月。運動も勉強も出来ず、料理も作るけれど別段美味しいわけでもないが、食べれないほどマズイわけでもない。中途半端な自分がここにいても良いと言ってくれる場所。それが彼女にはないのだと今まで思ってきている。
自分の居場所、自分だから出来ること、自分だけの――トクベツ
それを求めるのは人として自然だ。私たちだって、誰かの特別、自分だけの特別に多かれ少なかれ憧れるはずだ。人間は多くの場合において他者を通して自分を評価する。テストの点数、足の速さ、収入、配偶者や子供の有無etc...私たちは今も昔も、そしておそらくこれからも他人の評価に縛られて多くの時を過ごす。「他人は他人、自分は自分だ」という言葉も良く耳にするし、それも一理あるのだけど組織として、集団として、群れとして人間は生きなくてはいけない以上、他者からの評価は決して避けては通れない道だ。
話がそれてしまったが、そういったものへの渇望がおそらく満月は現存の登場キャラクターの中で一番強い。感情を表面には出さず笑みを絶やさないけれど、きっとその願いと想いはあるいはアンナや新月よりも――そしてロサよりも上なのかもしれない。
それが満月のアイデンティティーではないか。
§
さて、ここで少し考え方を変えてみたい。アイデンティティーがテーマであることは間違いないこの2話。それは満月というキャラクターを深堀りするために必要だが、私には別の側面があるような気もしている。
それは力の大きさの暗示だ。
何が言いたいかと言うと、満月や新月たちいうアイデンティティーは同時に「欲望」と言う言葉に変換可能ではないか。そしてその欲望の大きさが、もしかしたらグランベルムにおいてアルマノクスを動かす力――魔力と呼ぶのが正しいか分からないが――の大小に比例するのではないかということ。
初めて動かし、剣を突き出しただけでロサと彼女のアルマノクス・クレストアンスを一撃で葬り、グランベルムの戦いから脱落させた力然り、新月が開花を促進させた花を満月はさらに加速させさらに新月を驚かせるほど中庭全体に開花を促進させた力然り。それだけの力が満月にはある。ならその原因は何か。それは、それだけコロコロと笑みを浮かべる満月の胸の内に秘める「自分の居場所」という渇望がデカイということではないだろうか。
そう考えるとグランベルムの戦いは、満月との相性が良い部分もあるのだろう。マギアコナトスに封じられた魔力、勝者はそれを注がれる「器」になるわけだ。バトルロワイヤルのようなグランベルムを勝ち抜くことで魔術師は器を大きく強くして、最後にマギアコナトスに封じられた魔力を継承する。もしそうならば、自分を「空っぽ」「何もない」という満月ならばその膨大な魔力を誰よりも受け止める「器」になり得る資質があるかもしれないし、その資質こそが魔術師としての資質に繋がる可能性もゼロではない。
というのは、ちょっと早合点かな(笑
§
最後にちょっとだけ雑談。
この作品、どう見ても中盤から終盤にかけてダークな展開になりそうな予感しかしない(笑
・居場所を欲する満月の暴走の可能性
・グランベルムに満月が参戦するということは、最後の一人になるまで戦うわけだから当然新月とも戦わないといけない。
・メタな見方だがHPにも乗るロサがこのまま終わるとは思えない(闇堕ち確定?
・満月の妹・希望に近づくこととなった寧々と、台湾に残る二人の姉妹という要素。
・プリンセプスの魔術師という「なった後、どうなるのか」が分からない戦いの胡散臭さ
不安要素はたった2話でこれだけあるのだ。
邪推だが現時点で考えているのは、まぁ、なんというかプリンセプスの魔術師というのはたぶん「生贄」なんだろうなと思っている。バトルロワイヤルに勝ち残った先にあるのはご褒美でもなんでもなく、ただ「勝ち残った魔術師=一番優れている魔術師」が次代のプリンセプスの魔術師が出現するまでの間マギアコナトスと魔力を維持し世界を維持するための人柱になる、みたいな。いや、だってグランベルムの勝者であるプリンセプスの魔術師が、その後どうしているのかというのが一切出てこないからね。出てこないということは、そういうことなのかな、と。
作品としてもそれなら、今の満月なら喜んで人柱にでもなんでもなるだろうけど、話を積み重ねて新月たちとの絆を深めることで人柱になりたくない、死にたくないと願って、最後はグランベルム(マギアコナトス)というシステムそのものを破壊して大団円って流れはあり得るし。
まぁ、これくらいは誰でも想像するか。私は『ブラッディクロス』という大好きな作品が、言ってしまえばこんな感じのストーリーだったからそう感じたけど、他の人なら『まどマギ』とかも似たような展開だったんだろうし。
でも、それだと芸がないからなぁ……。
それにしても、私はこの作品、偉そうに長文書いておきながら最後まで観続けられるんだろうか?(爆
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NoTitle
普段笑顔でぼけーっとしているような満月にも悩みが。
「自分には何もない」「特別ななにかになりたい」という望みが。
まあ、特別ななにかになりたいという望みは誰にでもありますよね。
しかし大半の人はいなくても世の中回っていくような気も。
今後の展開はダークな展開もありますね。
しかし新月と戦わずにすむ方法を捻り出すのかも。
ロサは闇落ちして満月を包丁でぐさっとやるんでしょう(ぇ)