映画『ザ・ファブル』

(公式ホームページ)
原作未読。原作を知らなかったけれど、ここ最近映画館に行くことが多く、そこで視た予告編がそこそこ面白そうだったので閲覧。
あらすじは、
天才的な殺しの技術を持ち、裏社会で「ファブル(寓話)」と畏れられた伝説的な暗殺者がいた。彼は「ボス」と慕う男から、「一年間、一般人として普通に暮らせ。休業中に誰かを殺したら、俺がお前を殺す」と指令を出され、新たな戸籍として「佐藤アキラ」の名を与えられる。相棒もアキラの妹「佐藤ヨウコ」として一緒に東京を離れてボスの息がかかった暴力団の幹部・海老原がいる大阪で暮らすことに。
一般人として普通に暮らすべく奮闘するアキラは、就職先を斡旋してくれ自らもそこで働く一般人女性・ミサキと知り合う。イラスト関係の会社で雑用として働きながら、独特の感性を認められイラストを採用されたり、仕事仲間と呑みに行ったりと「一般人」として暮らしていくアキラだったが、彼の素性を知る者たちはボスの命令とは裏腹に彼を野放しには出来ずに動き出す。
一方、母親の医療費などでお金に苦労するミサキの前には、海老原の舎弟で殺人罪で服役を終え出所してきた男・小島が近づいてきて…
という感じ。
ストーリーは正直あまり評価してない。大筋としては妥当なところかなとも思うのだが、細かいところを観ていると原作未読だと不満点もあった。
大きく一つ目は、まず中だるみを酷く感じてしまったこと。アキラが大阪へ行き、海老原に住むことを認められてから救出作戦までの間に彼が「ファブル」としての姿というか、経験というか、一般社会との齟齬みたいな部分が感じられず、作品としては中だるみしている印象。せいぜい同僚男の盗撮に気付いたくらいだったか? 逆に中盤前のチンピラに殴られたフリをしたシーンは彼の特性が良く生きていて、そういった要素がもっと中盤にも欲しかった。
二つ目はキャラクターの多さによる若干の迷走。迷走というか、割と濃ゆい個性のある俳優さんがずらりと並ぶので、「それぞれに活躍の場を」みたいな形になってしまったのか、その分だけ一人一人の掘り下げやスポットが浅くボヤけている。例えば相棒・ヨウコは、原作では彼女メインのエピソードや活躍があるのかもしれないが、今作ではほとんどないので出てくる場面やヨウコというキャラクター性が中途半端になってしまっている(例えば、最後の救出作戦で彼女が素顔を晒してまで潜入する必要はあったのか?など)。
もちろん良いところもあった。
まずはアクションシーン。もう主演の岡田准一さんは凄いよね、と。何かのテレビで見たんだけど、あの救出作戦の際の壁昇りもスタント無しでやったとか…。そういった凄さも含めて、アクションシーンは見応えがある。まぁ、一番の見応えが冒頭シーンというのは、アキラが「殺しはしない」という制約を終盤では受けているので致し方ないといえば致し方ない部分ではあるが。
何気にアキラの日常シーンというのも、前述のように「暗殺者」としての彼がミサキを始めとする「一般人」の感覚のズレというのがあって面白かった。欲を言うならばもっとそういうシーンが多かったらなお良かったか。
サスペンスとしても、過去のグラビア活動のせいで小島にAV出演候補として目をつけられて追い詰められていくミサキというのもしっかりと機能していたと思う。
終わり方としては、「俺たちの戦い(一般人生活)はこれからだ!」的な感じで「良かった」というよりは「無難」な終わり方をしてしまったかな、とも想うが……まぁ、でもネタバレだが福士蒼汰さん演じるフードや小島の結末が明確なのでそういう部分ではしっかり「線引き」があってそこは良かったかな。
評価は、★★★(3点 / 5点)。原作は分からないが、映画版はもう少しコミカルさが強く出て(直近で観たせいもあるが)「MIB」みたいな路線の方がストーリー・キャラクター共に個性がより映えたかな。
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