映画『メン・イン・ブラック : インターナショナル』

(公式ホームページ)
『MIB』シリーズ最新作。ウィル・スミスはともかく、トミー・リー・ジョーンズが高齢ということもあるのか、キャストを一新しての作品となった(ナンバリングが「4」ではなく、「インターナショナル」となっているのはそのせいか?)。
あらすじは、
幼い頃に宇宙生命体と、それに遭遇したことで黒服の男たちの記憶を消される両親を目の当たりにしたモーリー。
二十年後、彼女は知力・体力ともにFBIやCIAの採用試験に合格するほどの水準にまで成長していたが、彼女が目指したのはただ一つ――エイリアンから地球を守る秘密組織「メン・イン・ブラック(MIB)」のみ。
ふとしたことから遂にMIBのNY本部の場所に辿り着いたモーリーだが、そのまま捕えられてしまう。しかし、彼女の熱意にNY本部を取り仕切るエージェントOは根負けし彼女を「エージェントM」として採用し試用期間としてきな臭い噂があるロンドン支部への出向を命じる。
Mがやってきたロンドン支部。そこにはかつて宇宙でも屈指の凶悪宇宙人ハイヴとわずかな武器で戦い、これを退けて世界を救った英雄とされるエージェントHがいた。しかし、今のエージェントHは女性や酒にだらしないチャラ男。そんな彼と共に命じられたとあるエイリアンの護衛。これにHとMは失敗し、護衛対象は殺されてしまう。だがMはその現場で、そのエイリアンからとあるものを託されていて――
といった感じ。
前述のようにナンバリングが数字ではないということで、続編と言うよりスピンオフと言う印象。モチーフである「コミカルなSF」である点はそのままなのだが、エージェントHがチャラいというか軽薄なのでそういったところでは「軽すぎ」た印象が強い。この手のコミカルなところは、やはりKやJのように多かれ少なかれ「真面目さ」「真っ直ぐさ」みたいなものがあってこそ際立つと思うのだが、Hは軽すぎていてギャップが足りずコミカルさが生まれていなかった。
そういう意味ではMの方をもう少し突っついた方がコミカルさという意味では面白く出来たかな、という印象。
ストーリー面では面白かったと思う。「スパイは誰か」といったところで、あれこれとキャラクターを探るのは興味深かった。中盤まではHの軽薄さやMの強引さが引っかかってあまり面白味を感じなかったが、そこはMIBシリーズ。最後の最後のどんでん返しはなかなかに効いた。
裏切り者はHか、同僚Cか、支部長をするハイTか。そうした中で重要なのはかつてHがハイTと共に三年前に臨んだハイヴとの一戦。それを語る彼の言葉に隠された「真実」。その真実が「ニューラライズされて偽りの戦果を記憶させられ、ハイTがハイヴに乗っ取られたことを忘れさせられていた」というのは「ニューラライズ(≒記憶操作が出来る)」という存在があるこの作品ならではだと思えた。その点に限って言えば、このストーリーはMIBシリーズと言う土台でやるからこそ意味があったと断言出来る。
欲を言うならば、最後に「ハイヴに乗っ取られ、事実上裏切り者となっていたハイT」にトドメを指すのは「H」であって欲しかった。一作目冒頭で長年の相棒にニューラライザーを使い記憶を消して引退させたK、その一作目の最後でそのKを引退させたのは後にKの後継としてエースになったJだった。「ハイTがHを後継だと思っており、Hもその想いに実は応えたいと思っていたならハイTへの引導はMではなくH」がMIB作品へのリスペクトとしてもオマージュとしても適切だったはずだ。そこを「ハイTとの付き合いの短いMに譲ってしまったこと」は最後をミスっていたかな、と。「ハイTとHがそれぞれを実の父・息子のように想いあっていた」みたいなくだりがなければこれでも良かったのかもしれないが……。
ちなみに日本語吹き替えだと、H役は杉田智和さん。最初は「杉田さんかぁ」と思ったが、キャラ的には合っていた。逆にM役は女優の今田美桜さんだったので、本業声優の杉田さんとの絡みが多いため、ちょっと対比が出てきてしまうシーンも…。
もう一つ余談を言っておくと、公式HPにあるような旧作のエージェントFらの出番はほぼなし。強いて言えばエージェントOは最初と最後に出てくるけれど、誰もが期待しただろうKやJは絵画でその活躍が賞賛されるだけに留まった。
ラストシーンに
J「なんかロンドンに面白いやつらがいるらしいぜ?」
K「そんなことより仕事だ」
J「ちぇ、相変わらずだな」
みたいなやり取りが一言二言あっても良かった気もするが…まぁ、ギャラなど問題か。
評価は★★★☆(3.5点 / 5点)。エージェントHがチャラ過ぎたところ、ラスボスのトドメシーンの違和感、スピンオフ・続編としては一新され過ぎたかなぁと言う点がマイナスか。逆に言えば、MIBシリーズを知らなくても楽しめる作品でもある。
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