ロード・エルメロイII世の事件簿 1 「case.剥離城アドラ」
- ジャンル:[アニメ・コミック]
- テーマ:[Fate/stay night]

著:三田 誠 原案・原著:TYPE-MOON 発行元(出版): KADOKAWA
≪あらすじ≫
魔術協会の総本山「時計塔」において、現代魔術科の君主に叙されているエルメロイ2世は、「剥離城アドラ」の遺産相続に立ち会ってほしいと依頼を受ける。内弟子のグレイを伴い城へと向かった2世を待ち受けていたのは、相続のための謎解きだった。招待された高位の魔術師たちにはそれぞれ“天使名”が与えられ、謎を解いた者が遺産を引き継げるという。魔術と神秘、幻想と謎が交錯するとき、悲愴なる事件の幕が上がる。
(裏表紙より抜粋)
感想は追記からどうぞ。
≪感想≫
ロード・エルメロイII世、ついに文庫化。コミック化されたものを読んでいるので内容は知っていたしアニメ化もされるので原作を読みたいと思っていたのでちょうど良かった。まぁ、アニメ化されるところは文庫化されるまで時間がかかりそうだけど。
さて、本作であるが、基本的な概要はコミック版を読んでいるので知っているため割愛。ここは純粋に小説としての文章に関する感想を残しておこう。
まず書式は基本グレイの一人称で進む。「師匠」ことロード・エルメロイII世(旧ウェイバー・ベルベット)に二か月前に時計塔に連れてこられ内弟子となったグレイは、魔術において基礎の基礎すら危うい知識量。だが、その設定があるからこそ基礎の基礎といったところも文章として描けるように設定している。そこが重要なのである。一人称で描く以上、案外ここが難しい。
そうした中でグレイを「語り部」としてだけでなく、「実働スタッフ」としての側面を持たせたことも大きな意味がある。彼女が相棒アッドと共に高い戦闘力を発揮出来ることで、探偵役でもあるロード・エルメロイII世が「典型的な魔術師(知識量は豊富だが、身体を動かすのは苦手)」というテンプレートに固定され(ここでいうテンプレートとは世間一般のものであり、TYPE-MOONの魔術師としてのテンプレートではない)、そのキャラクター性をより明瞭にしている。
その必然性からルヴィア、ハイネなど一部の視点も取り入れられているし、往年のFateファンへのサーヴィスとして本来グレイが知るよしもないこと(第五次聖杯戦争にロード・エルメロイII世が間に合わないことなど)も書かれてはいるのだけれど、そこはまぁ問題ではないだろう。そもそもグレイの正体とか考えるとね(ロード・エルメロイII世は「セイバー(アルトリア)の遠縁の子孫」と踏んでいるが。まだ正体明かされてないし)。
あとは前述のルヴィアゼリッタ・エーデルフェルト。これまでの作品ではややコミカルさや凛のライバルとしての立ち位置ばかりが注目されていてそういった描かれ方ばかりしてきたが、本作では正当で正統な魔術師としてのルヴィアが描かれている。彼女が将来的にエルメロイの教室(ゼミ)の門を叩き、これまた凛と共に時計塔で大暴れするという予定の前日譚としても申し分ない展開と結末と言えるだろう。
魔術という要素が絡む以上通常のミステリにはどうしても出来ないのだけれど、実は読み終えて振り返ってみると犯人はうっかりと余計な言葉を口にしている(初めて来たはずなのにこの城の辺りの植物の生息・自生具合に詳しかったり)などミステリとしての要素も全くないわけではない。
文章としてのリーダビリティは高い。さすが『レンタルマギカ』『クロスレガリア』などを手掛けた三田さんである。ただ、それでも土台にあるのはFateシリーズであり、そこでの基礎知識であるのでそういったものが薄い人にとってはまだ読みにくさはあるのかもしれないが…。
評価は、★★★★★(5点 / 5点)。基本的に一冊のエンターテインメント本としては申し分ない。
- at 14:57
- [アニメ(放送中):ロード・エルメロイII世の事件簿]
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