ウインクで乾杯

著:東野 圭吾 発行元(出版): 祥伝社
≪あらすじ≫
パーティ・コンパニオン小田香子は恐怖のあまり声も出なかった。仕事先のホテルの客室で、同僚牧村絵里が、毒入りビールを飲んで死んでいた。現場は完全な密室、警察は自殺だというが…。やがて絵里の親友由加利が自室で扼殺され、香子にまで見えざる魔の手が迫ってきた…。誰が、なぜ、何のために…。ミステリー界の若き旗手が放つ長編本格推理の傑作。
(裏表紙より抜粋)
感想は追記からどうぞ。
≪感想≫
祥伝社が、アニメ風というか漫画風というかキャラノベ風の表紙を追加して発売した、東野圭吾さんの作品。作品自体は平成四年のもの。
表紙を今の若者受けするような美少女イラストにしたというだけで、作品を加筆修正したわけでは当然ないので中身としてはその当時らしい要素や単語が多く見受けられる(ボディコン、車内電話(携帯電話やスマホなんてものはない)、隣家へ電話を借りる、ポケベルなど)。加えてストーリーも、一昔前に流行ったであろう長編ミステリで、トリックもそんな感じだ。ただ今の時代だからこそ、そこに懐かしさと面白味みたいなものは読んでいて感じた。
ストーリーは、
「お金持ちと結婚したい」「宝石に彩られた生活をしたい」と願う「玉の輿」思考の強いパーティ・コンパニオンの香子。以前から狙っていた不動産会社のイケメン専務が参加するパーティでコンパニオンをした彼女だったが、その日、一緒に働いていた同僚の絵里が自殺する。三角関係のもつれで絵里が自殺するというのは香子には信じがたいが、部屋は密室だったことから自殺と半ば断定されてしまっていた。それを不可解に感じていたところ、同じように自殺に引っ掛かりを覚えていた若手刑事・芝田が、香子の部屋の隣に引っ越してきたことから香子と芝田は二人で密室トリックの事件に挑んでいく
というもの。
ミステリとしては密室トリックモノ。そこに主人公・香子に、隣に引っ越してきた刑事・芝田、香子が前々から狙っていた男・高見(不動産会社のイケメン専務)を絡めている。恋愛もの、と呼べるほど恋愛要素が強いわけではないが、ただまぁ内田康夫さんの浅見光彦シリーズくらいにはストーリーに恋愛要素みたいなものが入っている形。推理をする香子、警察の内部情報を提供出来る芝田、そして一般人に見えるが実際は――という高見というキャラ配置が絶妙。ネタバレにはなってしまうが、一度香子と芝田が距離を置いてしまった後の展開はもう少し踏み込むことがあってもいいのかなともおもうが、まぁ恋愛ものじゃないんだからこれくらいあっさりでも良いのかとも思える。
もう25年以上前に発表された作品ということになるが、東野圭吾さんだけあってリーダビリティはこの当時の作品でも十分高い。トリックは盲点を用いたものと言えるかな。
評価は、★★★★☆(4.5点 / 5点)
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