改訂完全版 異邦の騎士

著:島田 荘司 発行元(出版): 講談社
≪あらすじ≫
失われた過去の記憶が浮かびあがり男は戦慄する。自分は本当に愛する妻子を殺したのか。やっと手にした幸せな生活にしのび寄る新たな魔の手。名探偵御手洗潔の最初の事件を描いた傑作ミステリ『異邦の騎士』に著者が精魂こめて全面加筆修整した改訂完全版。幾多の歳月を越え、いま異邦の扉が再び開かれる。
(裏表紙より抜粋)
感想は追記からどうぞ。
≪感想≫
島田荘司さんの御手洗潔シリーズの一つ。時系列的には一番最初に来るのかな?
作品としては割と初期の作品らしいが、読ませ方が巧くてリーダビリティがとにかく高い。文庫本としてはかなりの厚みになるが、それでも読むことを苦とは感じないくらいにサクサクページが進む。強いて言えば、「日記ページ」があるのだけどそこがちょっと長ったらしかったかな、とは思うが。
トリックとしてのアイディアも素晴らしいものだと思う。現実的に見ればかなり綱渡りなトリックではあるのだけれど、そこを上手く乗り越えているというか、結果的に乗り越えたというか。記憶喪失の青年を一人称とした物語という部分を最大限に理解し活かしたトリックでありストーリーであることは間違いない。
どちらかと言えばエンターテインメント性が強い形なので、メッセージ性みたいなものは希薄な方かも。そこを割り切ってエンターテインメントとして楽しむ方が良い。
ただまぁ、この手のトリックなのでネタバレを避けて感想を書くというのがとても難しいということか(苦笑 今も感想をどう描くべきかと悩みながらタイピングしているくらいだし。
興味深いのは、結局この作中においてのみ言えば結局殺人は未遂で、誰も殺されていない、大罪もないという点が凄いところか。ある種の日常系(まぁ記憶喪失の時点で非日常だが)。それでこのボリューム、このクオリティで描けるわけだから、島田荘司さんの凄さと言うのを、発表から30年以上経って読んでも感じることが出来た。
評価は、★★★★☆(4.5点 / 5点)。文句なし。ただキャラクターの個性など予備情報があった方が良く、そのために数作くらい御手洗潔シリーズを読んでおく必要性を感じるので、そこだけは-0.5点かな。
Comment
Comment_form