京都なぞとき四季報 古書と誤解と銀河鉄道

著:円居 挽 発行元(出版): KADOKAWA
≪あらすじ≫
街歩きサークルの遠近倫人は、幻の古書を探すため、古本市でバイトを始めるが、不可解な万引き騒動に巻き込まれてしまう。そんな中、恋い焦がれる謎好き女子・青河幸の態度が急によそよそしくなり…。下鴨神社、鉄道博物館、時代祭…神出鬼没の謎解きバー「三号館」の妖艶な女マスターのヒントを頼りに、倫人はこじれた恋と謎に結論を出すことができるのか?青春の輝きと謎が夜空に舞う、京都ご当地ミステリー、第2弾。
(裏表紙より抜粋)
感想は追記からどうぞ。
≪感想≫
京都を舞台にし、散策サークルに所属する大学生を主人公にした日常ミステリの第二巻。
とはいえ、正直前作の良さをほぼ殺した作品といって良い。というかほぼ別作品に近いような……。
作風は前作と比べるとだいぶビターな感じ。良く言えば、キャラクターの内面描写に一歩踏み込んでいるが、悪く言えばどろどろとした感情が出てき過ぎていて前作の良い空気感を完全にぶち壊した。
遠近の自己批評、青河の過去、そういったものはあるに越したことはない。彼らの「成長」は確かにある程度描けたのかもしれない。遠近は後述する蒼馬に頼らないことを選んだほどだ(一方で、他のキャラに頼りまくっているので個人的には大して成長してない気もするが)。
けれど、それがじゃあ、この作品にプラスだったかと言えば正直マイナスだろう。たぶん、前作を読んで二巻目を手にした多くの人が「この作品にはこういうことを望んでいない」と感じてしまう気がする。
その煽りを最も受けたのは、キーキャラであったはずの「三号館」マスター・蒼馬か。登場シーンの少なさはともかく、そもそもにしてキャラクターとして機能し切っていない上に、一巻目に比べてかなり性根が悪くなったような…。ぶっちゃけ、出てくる必要がない。いなくて成り立つ。そして、いなくて成り立つようなストーリーという時点で「続編」とは失敗作なんじゃなかろうか。
そういう意味では「京都が舞台」である必要性もだいぶ薄れたといって良いだろう。正直、この内容なら京都じゃなくても成り立ってしまう。京都に住んでいる、あるいは思い入れがある人が読んで「そうそう、こういう場所が~」とはならない内容だと思うし、この内容で「ご当地ミステリ」は名乗っていけない気がする。
ミステリという部分もかなり弱い。謎を解いたとは言い難く、「『三号館』の蒼馬さんに出されたお神酒を飲んだ主人公の推理がさえわたる」というお約束が発動しないので、謎を前にカタルシスは得られない。おまけに「語り部(=主人公)が犯人」というミステリとしては禁じ手……というわけではないが、かなり大博打な手を使った割にはパッとしないし……。
余談だが、調べてみるとやたら本作で名前が挙がった「瓶賀流」。実は著者の別作品の主要キャラクターなんだとか。だいぶむちゃくちゃやってくれたが、瓶賀流を活躍させたいならそっちでやってくれ、と言いたい。
評価は、★(1点 / 5点)。前作の良さを殺しに殺しまくった上に、他作品の主要キャラにほぼ乗っ取られたという状況に等しいという何がしたかったのか最後まで解からない一冊だった。
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