占い居酒屋べんてん 看板娘の開運調査

著:おかざき 登 発行元(出版): 実業之日本社
≪あらすじ≫
女子高生の菜乃は、駅の改札でスリの現場に遭遇、あやかを救う。財布を盗まれずに済んだあやかは、自らの居酒屋で唐揚げ定食をご馳走。その美味しさに驚いた菜乃は、店で働くことに―。グラスに落とした花びらで運勢を見るあやか、本業は探偵の千種、ゲーマーのやよいらと共に、菜乃は店に持ち込まれる事件や謎を追う。著者初の一般文芸文庫、書き下ろし!!悩める人を幸せにする!居酒屋ミステリーの決定版。
(裏表紙より抜粋)
感想は追記からどうぞ。
≪感想≫
趣味で占いをする女店主(ママ)・あやかが営む居酒屋で、父親が天才的なスリだった娘・菜乃はひょんなことからあやかたちと知り合いになって関わっていく、という話。
設定は面白いと思う。推理・ミステリとは対極の位置にあると言っても良いかもしれない「占い」というものを取り入れるというのは、斬新――かどうかは分からないが、面白い挑戦だと思う。
ただ面白い設定というだけで終わってしまっている感が強い。「占い居酒屋」としてのタイトルや誇張過ぎるかも? せっかくの占い要素なのに、事件に足を踏み込むための導入だけで終わってしまっており、占い要素としては物足りない。もう少し捜査・推理の段階でも占いをして、その結果から踏み込んだ捜査をしてみると「あやかさんが占った通りだったよ」みたいな感じでも良かったんじゃないかな、と思う。まぁ、そうなってしまうと「ミステリじゃない」となってしまうかもしれないが、そもそも日常系ミステリを取り扱っている作品なので、その辺りは逆にそう思われても良かったか、あるいはミステリとしての推理要素を充実させればよかっただけだし。
あとはキャラクターが、良くも悪くも平均的。本作では、主人公の菜乃、占いをする女店主・あやか、その年の離れた妹で電子機器に強いやよい、居酒屋の直上の階で探偵業を営みつつ居酒屋でもバイトをする千種という四人が主要キャラとして出てくる。
正直、この内容で四人は多すぎる。
キャラクターの個性が完全に分散・拡散されてしまって、前述のように平均化している印象でその影響もあるのかストーリー自体の起承転結の起伏もなだらか。もちろん四人のキャラにはそれぞれに役割は確かにあるのだけど、もう少し一人のキャラクターに複数の要素を組み込んだ方が個々のキャラクターの個性は際立って物語の起承転結ももう少しくっきりと出たような気がする。
(例えば、菜乃にやよいのSNSなどからの情報収集能力の要素を組み込むことは可能だっただろう。また人との付き合いを敬遠していた菜乃なのだからゲーマー的要素があっても設定としては不自然ではない)
評価は、★★(2点 / 5点)。個々の要素は面白いが、それを集約させた時にせっかくあった個性が全部潰されて平均的になってしまっているのが勿体ない。
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