グアムの探偵 2

著:松岡 圭祐 発行元(出版): KADOKAWA
≪あらすじ≫
職業も年齢も異なる5人の男女が監禁された。その場所は地上100メートルに浮かぶ船の中!警察による規格外の救出作戦は成功するか?そしてすべてを見越していた犯人の悪魔的計画とは?(「天国へ向かう船」)リゾート地でありながら基地の島でもあるアメリカ準州のグアムでは、日本では想像もできない事件が発生する。そんな謎の数々に日系人3世代探偵・ゲンゾー、デニス、レイが挑む、全5話収録の傑作ミステリ短編集!
(裏表紙より抜粋)
感想は追記からどうぞ。
≪感想≫
二か月連続刊行となったグアムの探偵の第二巻。今回も短編集だが、この作品はこの方向性が今のところピッタリと当てはまっていると思う。短編集なので簡単に各話の簡易感想を。
『スキューバダイビングの幻想』
不倫旅行にやってきたはずの日本人カップル。しかし、男の方がスキューバダイビングをしていたと思ったら姿を消し、実は日本にいた!? そのからくりと真意とは…という話。
そんなことが可能なのかよと思うからくりと、日本人の割には不倫の口封じのために殺人とかするのかなと首をかしげるところもあるが、まぁ私が知らないだけであるのだろう。サスペンスとしてはなかなか。
『ガンビーチ・ロードをたどれば』
レイたちの探偵社に依頼をしてきたのは美人だが控えめで奥床しい日本人女性・結衣。父や祖父から結婚や恋愛について語り聞かされていたばかりだったためレイは、好みのタイプということもあって結衣に惹かれるが…という話。
ここまでほぼ完ぺきな青年探偵として活躍してきたレイの感情が良く揺れ動いているエピソードに仕上がっていて面白い。
『天国へ向かう船』
催眠ガスで眠らされたレイが次に起きたのは、地上100メートルに浮かぶ船の中? 職業も年齢も異なる五人の男女に接点はなくあまりに不可解。それでもまずは救助を優先するのだが、と言う話。
なかなかに突飛なトリックであり下準備なので、それが可能かどうかというのはともかくとして密室モノとしては興味深く読めた。『ガンビーチ~』と比べて、レイの周囲が素人ばかりということもあって逆にこちらはレイの探偵らしさ、冷静さみたいなものが際立った。
『シュラトン・ラグーナ・グアム・リゾート』
高級リゾートホテルで殺人事件が起きた。殺されたのは、裏で闇金融を営む日本人男性で容疑者最有力として名前が挙がったのは、グアムでも絶対的権力を持つグアム港湾局のトップ・レヴェリッジ。しかし彼の顧問弁護士の手によって警察はあっさり手を引いてしまう。それでは困るグアムの観光協会はイーストマウンテン・リサーチ社に捜査を依頼。渋りながらもデニスは立ち上がり、という話。
レイではなくデニスがメインとなる話。レイとは少しばかりやり方が異なる形の捜査やストーリー展開をすることでメリハリというか、緩急みたいな「差」をつけてくれるエピソード。相手が大物過ぎるかなとも思う一方でブラフを上手く使って立ち回るデニスの手法は若々しく突っ走ることが多いレイにはない魅力。
『センターコート@マイクロネシアモール』
マイクロネシアモールに本土でそこそこ人気のバンドがコンサートをすることに。娯楽に飢える島民たちは喜んでおり、その警備を任された日系人のミヨコはレイたちと共に周囲を巡回するのだが、と言う話。
日本人らしい感覚と日本の暴力団が絡むという、なかなかな話。ただその割には巧妙に張り巡らされたトリックと内容はサスペンスや刑事ものに近い面白さがあった。
また全体的に松岡さんの作品に見られる「小ネタ」の使う塩梅が良い形に収まっている。初期の『千里眼』シリーズは読んでいないので分からないが、『Q』シリーズから『探偵の探偵』『水鏡』シリーズなどとにかく仕入れた小ネタを片っ端から強引に詰め込んで来る印象だったが、本作ではそういった部分は影を潜めて必要なシーンで必要ならばそういったネタも使うという形にブラッシュアップされている印象。
評価は、★★★★(4点 / 5点)。実現性という部分で疑問があるトリックやエピソードもあるにはあるが、外国を舞台としたフィクションとして考えれば十分無視して楽しめる。来月には三巻が出るというのだから、本当に松岡さんの「初速」には感心するしかない。
Comment
Comment_form