グアムの探偵

著:松岡 圭祐 発行元(出版): KADOKAWA
≪あらすじ≫
アメリカの準州グアムでは探偵の権限は日本よりも遙かに大きい。政府公認の私立調査官で刑事事件に関与でき拳銃も携帯が可能。そんなグアムの日系人3世代探偵、ゲンゾー、デニス、レイの下には、リゾート地であると同時に基地の島という特殊な環境が生む不可解な事件が次々と舞い込む。日本人観光客の誘拐・監禁、重要人物の立て籠もり…。スリリングかつ知的な謎解きに満ちた全5話収録の傑作ミステリ短編集誕生!
(裏表紙より抜粋)
感想は追記からどうぞ。
≪感想≫
松岡圭祐さんの最新シリーズ。個人的に、松岡さんは女性を主人公にしない作品の方が完成度が高い感じで、本作もそんな一つ。
探偵モノを描いているのは『探偵の探偵』シリーズと同じだが、大きな違いは舞台が日本ではなくアメリカの準州であるグアム。日本にとって、かつてはハワイと並ぶ海外旅行先の代名詞の一つであり決して馴染みがない場ではないけれども、やはり日本国内が舞台と比べれば大きく違う。
私としてはこの「違い」がポイントだと思っていて、コレがあるから読んでいて変に「日本的な価値観や社会観」に引っかからないようにしているのだと思う。例えば『探偵の探偵』シリーズはともかくとしても『水鏡』シリーズや『Q』シリーズなどでは、ヒロインたちの言動は日本社会であることを考えればあまりに幼稚・稚拙に見える部分も多々あった。
一方で依頼人の多くが日本人なのでそこまで大きく価値観としての「かけ離れ」がない点も良かった。
本作でも、登場人物たちにそういった言動もあるにはあるが、舞台が日本ではなくグアムだからそこに違和感を覚えない。ハッキリ言えばある種の「ファンタジー」なのだ。感覚として異世界みたいなものだから(実際、文化も違えば歴史も違い、それらを土台とする価値観なんかも全然違う)、そういった言動をするキャラクターが現れても「まぁ、こんなものか」と受け流せる。まぁ、さすがに主人公らの言動があまりに酷ければ目に着くのだろうが、その辺は探偵という職ということもあってクールにカッコよく描いているので今のところその心配はなさそう。
その主人公たちは日系一家。主な視点であり語り部である青年・レイはクールなんだけど人情味もある探偵として、その父・デニスはレイよりも冷静でより探偵と言う職業をこなす探偵として、その祖父・ゲンゾーは偏屈ながらも長年の経験に裏打ちされた探偵として、個々のエピソードは、そこまで突出している印象ではないがキャラクターがそれぞれ色の違いで魅せてくれている。
評価は、★★★★(4点 / 5点)。11月末にすでに次巻が発売されているというところは松岡さんらしい展開だが、この内容なら次もちょっと読みたくはなる。
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