天才 月澪彩葉の精神病質学(サイコパス) 研究ノート

著:玄武 聡一郎 発行元(出版): アルファポリス
≪あらすじ≫
自分の理解できないサイコパスに出会いたい―。そう願ってサイコパスの研究を続ける月澪彩葉。彼女はその専門を生かし、警察の事件捜査にも協力していた。だがあるとき、サイコパスの犯行ではあるが、動機が全くわからない殺人事件に遭遇してしまう。第二、第三の凶行が続く中、事件解決の鍵となるのは、見ただけでサイコパスを見分けられる「共感覚」の持ち主、北條正人だった―。
(裏表紙より抜粋)
感想は追記からどうぞ。
≪感想≫
近年何かとその単語だけが独り歩きし、普及している「サイコパス」という存在。それを題材にした作品もかなりの数があるわけだけど、本作もそんな一つ。
特徴的なのは、サイコパスと言う存在だけでなく「共感覚」という特殊な感覚の持ち主を主人公として投入した点にあるだろうか。サイコパスと言う存在を、共感覚で見抜こうというサイコパスレーダーとして訓練を受けて行く正人。それによって精度が高まるにつれて――という、二つの特殊な存在や力の流れを上手く絡ませているなと思う。
序盤はとにかくリーダビリティが高くて読みやすかった。専門用語が多くなりがちなサイコパスや共感覚というものを上手くかみ砕きながら描写しつつ、ヒロイン・月澪など個性豊かなキャラクターと、そんなキャラクターと軽快な会話を続ける主人公・正人のやり取りはサクサクとページが進む。
二章以降は、主人公であり共感覚を持つ北條正人の一人称描写が随所に差し込まれるため、そういったリーダビリティはかなり落ちる。とはいえ、プロット的にはこれをやっておかないと最後のどんでん返しに繋がらないため仕方ないといえば仕方ないのだけれど…。
犯人と真相、そこからの「踏み込んだ一歩」の捻りは考えているなとは思うが、面白いかと言うとちょっと微妙さもある。そもそも、それじゃあ犯行当日に主人公と犯人のアリバイが成立しないわけだから、そこから普通に突き崩せてしまいそうだしね。
最終的に恋愛要素にこじつけた辺りも、ちょっと強引かなと言う感じが否めない。その辺りの妥当性というか下地・伏線・布石を打つというところは、まだ改善の余地ありか。
評価は、★★★☆(3.5点 / 5点)。どちらかといえば、前半の軽快なトークと共感覚、サイコパスを絡めたストーリーの方が魅力的に思えた作品。後半をもっと練り込めれば高評価を与えられたかも。
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