辻褄先生のオカルトフォトクリップ
著:篠宮 あすか 発行元(出版): 三交社(SKYHIGH文庫)
≪あらすじ≫
「君は本当に貴重な被写体だな」
老舗呉服屋の跡取り息子の三十路裄は、目に見えないものは信じないが口癖のクールな男子高校生。入学初日、美人スクールカウンセラーの辻褄藍に写真を撮られると、そこには『不思議なもの』が写っていた。
以来被写体になってほしいと迫られる日々を送っていたが、ある日裄は<答えずの水道>と呼ばれている水道から、水が流れているのを発見し、それを止めてしまう。するとその日から裄の周りで奇妙な出来事が起きるようになり――!?
優等生の男子高校生と美人スクールカウンセラーのオカルト青春奇譚!
(裏表紙より抜粋)
感想は追記からどうぞ。
≪感想≫
久々にSKYHIGH文庫から。どちらかというと表紙買いに近い(笑
正直、個人的にはカメラや被写体といったところから短編形式みたいなものを想像して購入したのだけど、思いのほか長編だった。その辺りのスタート段階での「ミスマッチ」がそもそもにして読み手としては不幸だったのかもしれないが、ちょっとここから辛い評価になると思う。
全体的に読んでいて思ったのはリーダビリティ(読みやすさ)が足りない。欠如しているとまでは言わないし、別に小難しい単語やら専門用語やらを出しているわけではないのに読みにくい。原因の一つはおそらく統一されない文体だろうか。基本は三人称で書いている。それは主人公である三十路裄の名前が文章中に出てくることから間違いない。ただ、彼の視点で物語が進むので彼の内面・心理的な描写、つまり一人称的な描写が普通に混ざってしまっている。まぁ、それは別に他作品でも普通にあることだけど、そうした中で強く違和感を覚えたのはカウンセラーである辻褄藍の表現だろうか。彼の兄などは名前で呼称されるけれど、藍は「辻褄」と表現されるし、祖母は「大女将」と表現される。そういった個々の表現は裄基準なので、一人称と三人称が無駄にごっちゃになっている感じがして気持ち悪い。
もう一つの原因は裄の性格の悪さか。性格が悪いというか、「目に見えたものしか信じない」という信条があって、それは別に構わないのだけどいわゆる「霊」的なものが「見えて」もそれを信じないという、変な頑なさというか頑固さがマイナス方向に働いてしまっている。
そうした信条が物語にとって必要不可欠な意味があるならともかく……読んでて、前述のように一人称と三人称が変な形でゴチャゴチャしているので、そこに入って来る裄の心理描写がとにかくネガティブで後ろ向きだから読んでてキツイ。前述のようにそこに大きな意味があるなら良いけれど…。
またストーリーが長編というのもこの設定とミスマッチ。仮にこれで短編ならまだ読めた部分があったかもしれない。短いスパンで一度区切りが入るのでリセットされて裄の頑なな信条とかももう少し許容可能な部分になれたかもしれないのだけど、これが長編だから区切りらしい区切りも薄くて、余計に読みづらくしている。ネタとしても藍の撮影ネタとかそういったところも活かされていたとは言いづらいのも設定としては厳しいか。
評価は、★(1点 / 5点)。
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