猫河原家の人びと 一家全員、名探偵

著:青柳 碧人 発行元(出版): 新潮社
≪あらすじ≫
謎と事件好きの猫河原家。今夜も家族全員、殺人事件をめぐって、夕食前に迷推理を披露する。これも「推理せざる者、食うべからず」の家訓ゆえ。難事件に嬉々とする両親兄姉たち。普通の女子大生でいたい私はいつもブルー。正直、推理なんかしたくない。のに、遭遇した事件にピンときた瞬間、髪の毛は逆立ち、「名探偵」降臨。真相を見事突き止める―え?一番の推理好きは、私?
(裏表紙より抜粋)
感想は追記からどうぞ。
≪感想≫
『計算ノート』シリーズなどの人気シリーズを持つ青柳碧人さんの作品。
いきなりこんなことを書くのアレかもしれないが、全体的にチグハグさが目立ちに目立ちまくった作品だった。切り口というか、アイディアは面白いと思う。ただ、一方でそれを活かし切れているかというとそれはかなり苦しい。
最大のマイナスポイントは、読了感の悪さ。とにかく主人公であり語り部であり、家族の中で唯一推理をしたくなく名探偵にもなりたくないと思っている友紀が、とにかく理不尽に不幸。そうした不幸の積み重ねを経てカタルシスがあるとかならともかく、そういったものもほとんどないし。それに拍車をかけているのは、前述のように彼女が唯一家族の中で推理したくないと考えていること、にある。例えば、逆に彼女が家族の中で最も積極的に推理をするようなキャラなら、この展開でももう少し読了感というか読後感は良かっただろう。
そういった部分含めて、ストーリー展開と設定とのチグハグさがとにかく目についてしまった。もっと言えば、ここまで不憫ならせめて彼女が惚れたバイト先の桜井はフリーであって欲しかったとか、最後の一人暮らし編からのラストの結末はもう少し彼女なりに自分と家族との関係を見つめ直せてからの方が良かっただろう、とか。
ただ、それ以上に問題なのは名推理ならぬ迷推理を披露する両親兄姉たちか。最終的にはみんなでしっかりとそれぞれの方向性から真相に辿り着いていたようだが、そこに至るまでの迷推理、冤罪が多い割に当人達にはそれに対する反省が一切ないというのが…。確かに彼らは別に父親以外は捜査機関の人間ではないし、現実の事件に対して冤罪だろうがなんだろうが噂程度のレベルで推理する分には何の問題はないが、そこに現役警察官である父親が混じってしまっていることは大きな問題。父親が捜査会議に参加していないとかならともかく、普通に参加して情報提供してるからなおたちが悪い。
これはもう単純に主人公が、他の家族を圧倒するだけの推理力を持たせるしかなかったかな、と思う。そうすれば「迷推理」をする家族たちに対して「冤罪を生むわけにはいかない」というある種の使命感で主人公が「名推理」を発揮しなくてはいけない、というお膳立てが成り立ったというのに…、結局家族全員相応の推理力がある、というのでは五十歩百歩というか団栗の背比べでしかなくなって、結局キャラが立ってない。
なんというか、どこまでもお粗末な感じ。
評価は、★(1点 / 5点)。アイディアは面白い。しかし、練り込みが素人目に見ても圧倒的に足りてない。
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