隅田川殺人事件

著:内田 康夫 発行元(出版): KADOKAWA
≪あらすじ≫
浅見雪江の絵画教室仲間である池沢英二が再婚することになった。ところが結婚式当日、定刻を過ぎても花嫁の津田隆子は現れなかった。隅田川の水上バスで式場へと向かう途中、船内から彼女の姿が消えたのだ。数日後、築地の掘割で隆子らしき女性の死体が発見された。雪江の依頼で、光彦は調査に乗り出すも、死体は別人。しかし、被害者の口に銜えられたバッジが池沢の物とわかり、彼が容疑者に…。被害者と池沢の関係は?消えた花嫁の行方は?錯綜する事件の真相に迫る浅見光彦自身にも死の影が…。長編旅情ミステリー。
(裏表紙より抜粋)
感想は追記からどうぞ。
≪感想≫
浅見光彦シリーズの一冊。
全部で200頁強と、数ある浅見光彦シリーズの中でもとりわけ文量が少ない。しかし、そうした中でミステリーとしてしっかりしている辺りはさすがというか、むしろ短いからこそ凄いな、と。
良く言えば簡潔に纏まっている、悪く言えば割と端折り過ぎてる。短いからこそ、「そもそもどうして水上バスに被害者を乗せる手はずになったのか」「残務整理と引き継ぎで横領がバレるくらいならとっくの昔に気付かれてるだろ、4億もなんだから」とか実は突っ込みたくなるところが満載だったのだけれど、でもまぁそこをやって文量が無駄に多くなってテンポが悪くなるならこれくらいで良かったのかもしれない。
さて、ストーリー的には物珍しい点が「短い」割に「短い」と言う以外にも多数ある。
一つは「いつもは光彦の探偵活動に苦言を呈する母・雪江が依頼主であり、その都度気にかけている」ということ。二つ目は「以前の作品のヒロイン・小松美保子が再度ヒロインとして登場する」ということ。三つ目は「光彦が地方へ行くシーンがなく、東京都内で完結する」ということ。四つ目は「光彦が物理的に犯人に襲撃され、そこから脱出したシーンで終わり、明確なエピローグがない」ということ。
いずれに関しても他シリーズにおいてはあまり他例を目にすることが少ないものだ。最後の四つ目なんかは光彦の珍しいほどの迂闊さやうっかりが出ての結果ではあるが、それを光彦自身が自覚しているし、こういったミスをしている光彦と言うのが他シリーズに比べて人間味があったかな、という風には思えた。
評価は、★★★★(4点 / 5点)。テンポよく読み進めて終わることが出来るので、そういう意味で「物足りなさ」よりも「読みやすさ」が目立った。
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