瑕疵借り

著:松岡 圭祐 発行元(出版): 講談社
≪あらすじ≫
訳あり物件に住み込む藤崎は不動産業者やオーナーたちの最後の頼みの綱。原発関連死、賃借人失踪、謎の自殺、家族の不審死…どうすれば瑕疵を洗い流せるのか。男は類い稀なる嗅覚で賃借人の人生をあぶり出し、瑕疵の原因を突き止める。誰にでも明日起こりうるドラマに思わず涙する“賃貸ミステリ”短編集。
(裏表紙より抜粋)
感想は追記からどうぞ。
≪感想≫
『Q』シリーズや『探偵の探偵』、『水鏡』シリーズなんかを読んできた松岡圭祐さんの作品。正直、前述のシリーズを読んでいたが近年の作品と水が合わないというかそりが合わないというか、まぁそんな感じで一読者として落胆し失望してこの人の作品は二度と読まないと思っていたのだが、まぁ主人公女性じゃないし短編集ならいいかと思って手に取ってみた。
ただ読んでみて思ったのはやっぱり松岡さんの作品は松岡さんだな、と。なんというか、なんでこんなに最近のこの人の作品の登場人物には礼儀とかがないかなぁ、と(苦笑 特に女性。一作目とか読んでて「あぁ、この礼儀知らずな女性を描くのは松岡さんだ」と変に納得してしまったほどだ。まぁ、オムニバスでそのケースに適したダメ人間を語り部に選んでいる節があるので、そのせいではあるのだろうけど…
あとは単純に「これ、ミステリか?」というところ。一作目はまだミステリと言える。けれど、二作目以降に関してはミステリとしての謎を解くという要素が希薄だ。特に二作目。瑕疵物件の前の住人が映っていた動画に見えた女子高生の制服から地域と場所を特定? これ、文章媒体の小説なんですがね、と言いたい。詳細なんて何一つなくて文章で「女子高生」が映っていてそれをスマホで検索して地域特定とか…。読者に謎を解かせる気がないのだろうけれど、ならこれをどこまでミステリだと容認出来るかが読者によってこの作品の評価を左右するポイントの一つかもしれない。
全体的に作品を重ねれば重ねるほどこの人残念になっていくなぁ、という印象。ただ過去作に比べると無理矢理ねじ込んだような雑学がやたら散見していたけれど、本作ではそういった部分はかなりテーマに沿って絞っているのでその点では本として読みやすくはなっていると思う。
探偵役も良い意味でサバサバしているので、人によっては好き嫌いが分かれる可能性もあるが、フラットに読める点はグッドだと思う。
評価は、★★(2点 / 5点)。
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