掟上今日子の色見本

作:西尾 維新 発行元(出版):講談社
≪あらすじ≫
「掟上今日子は預かった。返して欲しければ、十億円用意しろ」置手紙探偵事務所唯一の従業員・親切守が受けた、突然の脅迫電話。天涯孤独の忘却探偵を救い出せるのは自分だけ。今日子さんのような推理力はもたないけれど、彼には今日子さんとの「記憶」がある。手探りで捜査を開始する守。一方、今日子さんは犯人のもとで目を覚まして―?置手紙探偵事務所VS.漆黒の誘拐犯!頭脳戦の結末は!?
(カバー帯より抜粋)
感想は追記からどうぞ。
≪感想≫
気が付けば忘却探偵シリーズも第十弾。随分早いペースはさすが西尾維新さんといったところ。
今回は誘拐される今日子さん。前回は犯人に仕立て上げられていたのだから、あれこれとネタを振り絞っているなと言う感じ。語り部はかなり久しぶりの親切守。語り部としては二巻以来だっけか? 正直、語り部としてはちょっと微妙さもある。確かに今まで大部分の作品で語り部を務めた隠館厄介に慣れてしまった、と言う部分もあるのだろうけれど、ちょっと語り方というか切り口が違う感じが、悪い意味で違和感として残ってしまった感はある。
さて、改めて本作ではあるが、今日子さんが誘拐されてしまい身代金を請求されてしまった掟上ビルディング唯一の雇用労働者(警備員)となっていた親切守視点と、今日子さんを誘拐した犯人視点の二つで進んでいく。犯人側の視点があることで、どうやって今日子さんを誘拐したのか、誘拐したあとどこに監禁したのか、さらにはそんな誘拐犯相手にあの今日子さんは一体どういった対応をするのかという部分を描けている。
……描けているのだが、私なりの率直な部分としては単純に「守視点だけでは長編になり得なかったから」だと思ってしまう。あとは守視点だけだとほとんど今日子さんが出てこないので作品としてどうなのか、ということになるから、とかかな。それならいっそ潔く犯人の視点だけでも良かったような気もする。
正直、守視点があるのは厄介や「冤罪製造機」の異名を誇る(?)不良刑事・日怠井をファンサービス的に出したかっただけなんじゃないかとすら勘ぐってしまう。それがファンサービスなら要らなかったかな。確かに厄介を第三者の目で見ると確かにちょっと変人で、いつも犯人扱いされてしまうのも解かってしまう部分は面白いといえば面白いが。
ただフォローもしておくと、実は二つの視点を与えることでミステリとしては、フーダニット(守視点)とハウダニット(犯人視点)の両方をこのエピソードに与えている点は面白い。
ミステリーとしては、最後の「色見本」に度肝を抜かれた。タイトル回収なわけだけど、その異常性に度肝を抜かれたし、あり得ないことだろうけれど理論上不可能ではないことなので面白いアイディアだな、と。その「色見本」を最後のエピローグにはあっさりと放棄・消去してしまう(守視点では、ということなのでどこか保存先を変えただけとも考えられるが)今日子さんの「忘却探偵」としての徹底っぷりも良い。
キャラクターとしては改めてこの色見本を読むと、掟上今日子=羽川翼説を唱える人が多そうだな、と(笑 あまりネタバレになってしまうのもアレなのでそういった説を唱える人の論拠になりそうな部分は外すが、一つだけ書いておくと劇中で今日子さん自身が「かつて戦闘機並みのお値段がついた私の頭脳」と語っていることも、そういった説へリードする一つの要素だろう(翼は、物語シリーズで忍野メメを連れて帰るために戦闘機チャーターの代価として(比較的良心な機関へ)頭脳を売ったというような発言をしているので)。あと、今回の表紙の今日子さんやたら巨乳なので(ぇ
まぁ、西尾維新さんがこうもある意味露骨なことをしてて例えば最終巻で「実は羽川翼でした(あるいはそれに類似するもの。例えばクローン、脳もしくは記憶を移植したアンドロイドなど)」と何のサプライズもないようなことはしないと思うんだけどね。
評価は、★★★☆(3.5点 / 5点)。若干くどかった感もあるが、掟上今日子の異常性と言う部分は面白く読むことが出来た。
- at 10:16
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