刹那的虹色世界

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がん消滅の罠 完全寛解の謎

がん消滅の罠 完全寛解の謎

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著:岩木 一麻  発行元(出版): 宝島社(宝島社文庫 「このミス」大賞シリーズ)

≪あらすじ≫
呼吸器内科の夏目医師は生命保険会社勤務の友人からある指摘を受ける。夏目が余命半年の宣告をした肺腺がん患者が、リビングニーズ特約で生前給付金を受け取った後も生存、病巣も消え去っているという。同様の保険金支払いが続けて起きており、今回で四例目。不審に感じた夏目は同僚の羽島と調査を始める。連続する奇妙ながん消失の謎。がん治療の世界で何が起こっているのだろうか―。
(裏表紙より抜粋)


感想は追記からどうぞ。

≪感想≫
久々に「このミス」大賞シリーズ。かなり大々的に宣伝されていたので、よほど良いのだろうなという期待を以っての購入。結果から言ってしまえば、私にはさほど合わなかった、というのが本音である。


まず、序盤の導入がやや長めな上に医療関係の知識のない人々へのハードルが高め(というか、医療関係の知識がある読者の方が少数派ではないかと思うが)。とにかく専門用語が多く、最初の数十ページを読み超えられるか否かがそもそもこの本を読破出来るかの難関というのは、いささか難易度が高いと感じてしまう。

裏を返せばそこから先は、序盤のようなリーダビリティを著しく下げるような専門用語の多発は回避されており、中盤以降は比較的医療知識がなくとも言いたいこと、伝えたいことは分かりやすく纏められており、序盤と中盤以降でリーダビリティの差が如実にある感じはちょっと「ムラがある」と感じる。

ミステリとしての完成度は判断が難しいところ。医学の知識がないとこのミステリの妥当性、あるいは作中で読者がこの結論に達することが出来るだけの伏線が十分に張られていたかどうかの判断が素人では不可能だからだ。着眼点としては面白いと思うし、DNA操作による自滅プログラムの封入が将来的にあるいは現段階で可能な技術ならばなおのこと良い切り口なのだとは思う。

一方で、ミステリとしてのもう一つの側面――謎そのものの魅力ではなく、その謎を解く探偵役やその過程と言う魅力に関して言えば、正直欠いていたというのが率直な私なりの書評である。謎を解く過程はあまりに淡泊になってしまった感は否めなく、また一応このストーリーにおける探偵役である夏目の親友・羽鳥と事件の真相における因果関係はさすがにこじつけが過ぎる感じが強い。

そうした中で作中では、著者の自論的な要素も多々込められている。政治家批判、新薬承認までの長さなんかはまさにそれなのだろう。そこには私なりに賛同できる点、出来ない点はあるし、多くの読者の間で賛否はあると思う。

ただ、それ以上に引っかかるのはそうした著者なりの自論なりなんなりを含めた上でのエピローグの不完全燃焼さというか、もやもやが強く残る読了感というのがあるのだ。

ハッキリ言えば湾岸医療センターやその「理事長」がやっていたことは犯罪であり、何よりも生命の冒涜である。他人の命を自己の利益のためにもてあそんでいるだけだ。それが良い、とは言えないがフィクションの小説である以上はそういった展開があることを批判するつもりはない。しかしながら、そうした者たちの行きついた結末が警察すら騙して実は生き延びている、というのが私として「この結末で著者はこの本や結末を通して読者に何が言いたかったんだ」と思ってしまうのだ。結局は、知識があって悪どい人間だけがうまみを吸うのがこの世界で社会なのだといいたいのだろうか。そうだというのなら、仮にこの著者が今後直木賞やらなにやら有名な賞を取ったとしてもどんなに話題になる作品を描いたとしても私は二度とこの著者の本を手に取ることはないだろう。

また主犯であり黒幕の人間の動機も共感し辛い。あまりに自己中心的。それが極悪犯として描かれ相応の報いがある結末ならまだ納得したかもしれないが、そうではないのだ。自身の精子バンクへの提供の過去とそれを妻への暴露、それを聞いた妻の不貞、その結果として生まれた子供とその子供の死。全ては自分自身が元凶にも関わらず、その原因を他者へなすりつけるだけなすりつけて、自分はのうのうと生き延びている結末に果たしてどれほどの読者が「この本は良かった」と納得出来るのか、私にははなはだ疑問しか残らない。

小説はエンターテインメントである。同時に著者が本を通して訴えかけるべき媒体であり、さらにそれを手に取る多くの人が目にする媒体でもある。確かに著者はこの本の中で医療のこと、がんのこと、新薬のことなどいろいろな持論を展開しているが、「で、貴方は結局、何が言いたいの?」という不明瞭さが強い。そこが不明瞭だから、正直私としてはエンターテインメントとしても楽しみ切れなかった。


評価は、★★(2点 / 5点)。着眼点としては面白いのかもしれないが、それを活かすだけのキャラクターやストーリー、何より著者がこの本を通して何を訴えたいのが全く見えない。この本を大賞に選んでしまうのだから、宝島社の「このミス」シリーズももう信頼性に欠ける賞に落ちぶれてしまったのかもしれない。

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