黒猫の小夜曲

著:知念 実希人 発行元(出版): 光文社
≪あらすじ≫
黒毛艶やかな猫として、死神クロは地上に降り立った。町に漂う地縛霊らを救うのだ。記憶喪失の魂、遺した妻に寄り添う夫の魂、殺人犯を追いながら死んだ刑事の魂。クロは地縛霊となった彼らの生前の未練を解消すべく奮闘するが、数々の死の背景に、とある製薬会社が影を落としていることに気づいて―。迷える人間たちを癒し導く、感動のハートフル・ミステリー。
(裏表紙より抜粋)
感想は追記からどうぞ。
≪感想≫
設定としては以前の作品(優しい死神の飼い方)を継承している。「続編」というよりは同じ世界感と設定による「派生作品」といった方が近いかもしれない。まぁ、前作のキャラも出てくるんだけどね。
前作では終末医療のホスピスが舞台になっていることで、地縛霊を救うという形に説得力を持たせていたが、今回はそれはなし。ただそれとは別の形として、地縛霊だった記憶喪失の魂の記憶を取り戻せるようアレコレ互いに協力し合うという形にすることで別の切り口で説得力を持たせている。
ミステリとしては、記憶を読み取れてしまうのでちょっと推理する上ではチートなのかな、とw それでも第二章のドッペルゲンガー絡みのところはかなり良い感じになりそうな予感はあったのだけれど、そのトリックがなんというか……金にものを言わせ過ぎというか、建築基準上問題ないのかとかいろいろ思ってしまってフィクションだから出来た感が強くて微妙さが残る。犯行動機もややそういった「フィクション感」が強いのだけど、まぁそれをいったら神様やらあの世やら道案内(死神)やらがいる世界だからね。そういった世界観だからこそ出来るモノを著者としてはやりたかったのだというのであれば、それには一定の理解は示せる。
短編集のように見せながら実は前作以上に全てのエピソードを絡め含めての一冊の本と言う形になっているので、どちらかといえば長編として読むのが良いだろう。語り部であり主人公の「道案内」のクロがやや思い込みが激しいので、そこが語り部としてはちょっと不適切さもあるが、それもミスリードのためと好意的に捉えるならとても良く纏まった一冊と言えるだろう。
評価は★★★(3点 / 5点)。
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