京都なぞとき四季報 町を歩いて不思議なバーへ

著:円居 挽 発行元(出版): KADOKAWA
≪あらすじ≫
時間や場所を問わず、京大構内で営業を始める「三号館」は、謎を持つ人しかたどり着けないという不思議なバー。妖艶な女マスターは、どんな悩みや謎もすっきり解決してくれるという。四つ葉のクローバータクシー、鴨川の川床、京都水族館、祇園祭…街歩きサークルの遠近倫人は、身近で起こった不思議な出来事の謎を「三号館」に持ち込んでみるが…。季節感溢れる古都で起こる不思議と恋。学生たちのほっこり京都ミステリー。
(裏表紙より抜粋)
感想は追記からどうぞ。
≪感想≫
元は単行本だったものを文庫化したもの。
「四季報」という使い方には激しく誤解を生むのでタイトルはもう少し考えて付けた方が良かったのでは、と変なことを想ってしまった(笑 四季報なので厳密には、四月から七月までの物語を描いているので間違ってはいないのだけれどね。
さて、本編は日常系ミステリ。妖艶なマスター・蒼馬美希が不思議なバー「三号館」を訪れた主人公・遠近にお酒を出し、それを呑んだ遠近がパッと冴えて自身に訪れた謎を解く、というのが大まかな流れの短編集。
この作品の良い点はキャラクター面だろう。ひと言で言えば「安易」ということがないのが良い。とりわけ、安易な恋愛展開にならない点は、この作品があくまで京都を舞台としたミステリである作品なのだと強く誇示しようとしているようにも思えた。特に四番目「ペイル・ライダーに魅入られて」は、妖艶な美人のマスターがいるバーであれば当然予想されうる展開ながらも、従来のミステリだとあまり描かれていなかった展開なので、そういった切り口が使えるというのはキャラクターを良い意味で安易に使い捨てにしていない感じがあるのかもしれない。
一方でミステリとしてはあっさりというか、勘違いというか意図的に意識をずらすようなトリックが多いのが特徴。まぁ、日常系ならこれくらいか、といったところでもある。また謎を解く探偵役も「お酒を飲むことで冴えた」と言う形にしているとはいえ、あくまで主人公の遠近であり、謎のマスター・美希はあくまでそれを裏でコントロールしている感じにとどめているのも良い。
最後には謎の美人マスターの正体も明かされるので、そういう意味で続編は期待しようもないが、一冊の本としてはしっかりと完結していて良かったと思う。
評価は、★★★☆(3.5点 / 5点)。
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