機巧銃と魔導書(グリモワール)

著:かずきふみ 絵:笹岡 ぐんぐ 発行元(出版): SBクリエイティブ(GA文庫)
≪あらすじ≫
キョウヤが追うのは異世界から転移してきた異能者たち。せっかくの異能を安っぽい悪事に使う輩は後を絶たず、キョウヤたち対異能の特別組織「クラウ・ソラス」の面々は、そんなささやかな事件を追う日常を送っていた。ところがある日、奇妙な殺人が起こる。二人セットの被害者。改変されていく現実。明らかに異能が絡んだ事案であり、これに異能マニアである新米のフィヨルは大奮起。銃と魔導書を手に不可解な事件の裏側にある「真相」へと迫るキョウヤとフィヨル。その顛末やいかに?
(裏表紙より抜粋)
感想は追記からどうぞ。
≪感想≫
読んだものとしては今年最初のラノベ。感想溜めこんでるんだけどねw
ストーリーは、良く言えば纏まってるのだけれど、ところどころ辻褄が合わないなぁ、と感じてしまう部分もある。もちろん、それは著者に言わせれば「いや、明示出来なかっただけで~」と言う部分なのだろう。そう感じてしまうのはストーリーのちぐはぐさという部分ではなく、むしろ語り方――人称の使い方の曖昧さかな、と思ってしまう。まぁ、ラノベに限らず誰の視点で描かれる物語なのかというのを意図的に、あるいは何も考えないまま曖昧な作品もあるんだけど、この作品は正直後者かな、と思ってしまう。
異能、魔法、異世界と言う要素がありながらもやっていることは、刑事ミステリ的なところが強い。敢えてそういった異能バトルや魔法バトルにしなかったのは案外良かった点。
ただ、設定面では迷走している感じが強い。ヒロインの持つ魔法の利便性の高すぎ(使用には魔力消費が激しい欠点もあるが、その欠点が活かされているとは言い難い)だし、主人公がなかなか異能を使わないけれどキューブと呼ばれる機械生命体がそれ以上に便利すぎる点など、もう少し設定をシンプルにした方が話の流れもシンプルになったんじゃないだろうか。
設定で言えば、主人公の組織と他の組織の無意味な確執は本当に無意味だと思った。ストーリー上何の意味も持っておらず、現代における警察や検察といったもののフィクション的な組織間の確執がたたき台にあるというかベースにあるのだろうが、そこまで対立させるならもう少しそこに意味は持たせないと、確執を持たせている意味がない。ぶっちゃけてしまうと、組織の間の確執がなくても物語は多分成立する(というかその方が面白かったような気さえする)。それじゃダメだろ、と。確執を持たせるなら、いっそのこと主人公側があまりに有能で他の組織の手柄をどんどん横取りする、くらいの主人公側の恨まれる原因みたいなことがないと…。
キャラクターに関して言えば、ヒロインは及第点で主人公は落第点。終盤にかけての主人公のキャラクター性がブレブレで読んでいて痛々しいというかなんというか。まぁ、不幸のごった煮みたいな過去を持つ主人公はラノベの主人公らしいと言われればその通りではあるんだけど、それを突如終盤に出さなくてもいいかと。出すなら最初から、最初に出さないならそんな設定持ち出すなと言いたい。あと、明らかにフラグな単独行動をどうしてとってしまうのか(苦笑 素人主人公ならともかく、コイツ訓練してんだよな、と思うとそういう細かい言動の部分で萎えさせてしまう点が多々あってしまう主人公。
いや、それ以前にタイトルに機巧銃ってあるならもっと機巧銃という部分にちゃんとキャラクター性と設定を付け加えてもっと使いまくれ、と言いたい。ただの武器でしかない銃を仰々しく「機巧銃」なんて名前でタイトルに使った意図が分からないくらい。
辛口批評ばかりではあれなのでキャラクター面で良かった点は、黒幕の正体だろうか。キャラ名は伏せるが、変身異能はあまりに便利すぎるのでもう少し抑制したりいろいろ工夫がないといけなかったとは思う。でも名前があるキャラクターが出ている意味がちゃんとあったのは好印象だった。
評価は、★★(2点 / 5点)。異能のアイディアなんかは面白いと思ったし、ストーリーの纏め方も元々はシナリオライターらしい著者なのでそこは上手いのだけれど、設定やストーリーにあれこれ詰め込めようとしすぎてごった煮と化しているのでもう少し余分な部分はそぎ落としてシンプルにした方が良かった気がする。
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