歪笑小説

作:東野 圭吾 発行元(出版):集英社
≪あらすじ≫
新人編集者が目の当たりにした、常識破りのあの手この手を連発する伝説の編集者。自作のドラマ化話に舞い上がり、美人担当者に恋心を抱く、全く売れない若手作家。出版社のゴルフコンペに初参加して大物作家に翻弄されるヒット作症候群の新鋭…俳優、読者、書店、家族を巻き込んで作家の身近は事件がいっぱい。ブラックな笑い満載!小説業界の内幕を描く連続ドラマ。とっておきの文庫オリジナル。
(裏表紙より抜粋)
感想は追記からどうぞ。
≪感想≫
笑いシリーズ(?)なのかどうなのかは知らないが、『怪笑小説』を読んだので手に取った作品。
だが実態はまるで違うので驚いた。本は、出版業界を面白く誇張し、おそらく時折「そんなバカな」と読者が想っている内容が実は真実っぽいようなネタも含まれていたりと、暴露本的なところもあるのかもしれない。
それぞれの短編でちゃんと小説および小説家に関するテーマがカッチリしていて、その点では『怪笑~』よりも読みやすかったというか分かりやすかった。
例えば文学賞絡み。新人賞だと最終候補に残ると佳作でもデビューしている作家がいる一方で、その後も売れ続けるのか、そもそも本として出せるのか。あるいは編集者側からすると文学賞そのものにもランクがあって、選考には多方面に気を配ったりなんだったり。
あるいは小説家そのもの。映像化されることになって浮かれる作家の姿、作家にとって適切な編集者の形とは何か。そしてそもそも「職業」として小説家というのはどういったものなのか。そういったものがあちことに皮肉めいた部分を含みながら散りばめられている。
個人的にはそういった小説家そのものの実態について書かれているエピソードが面白いと思った。「職業、小説家」はその際たるものだが、他にも「引退発表」「序ノ口」辺りがそんな感じかな。
分かりやすいせいか、『怪笑~』のようにあとがきでわざわざ東野さんが懇切丁寧に説明するあとがきはないが、遊び心なのか架空の巻末広告は面白いと思った。
評価は、★★★☆(3.5点 / 5点)。短編集なのでエピソードごとの当たりハズレがないわけではないが、全体的にどれも面白い。小説家という存在や出版業界に興味があるなら、もう少し高評価かもしれない。
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