美人上司とダンジョンに潜るのは残業ですか?

作:七菜 なな 発行元(出版):KADOKAWA(ノベル0)
≪あらすじ≫
とある企業の会社員・牧野祐介は、上司・黒木姫乃(26)から業務後の呼び出しを受ける。巨乳の黒髪ロング美人である黒木主任と、まさかの社外デート?などということはなく、それはダンジョンアタックへの同行命令だった!?だが、仕事では「鬼の黒木」と呼ばれるエースなのに、どういうわけかダンジョン内では超絶へっぽこで―「これは、営業よりたいへんなことになったぞ…」牧野は黒木を一流のハンターに育成し、ダンジョンでのサービス残業から脱出できるのか!?職場とダンジョンでは立場が変わる、お仕事系ダンジョンファンタジー!
(裏表紙より抜粋)
感想は追記からどうぞ。
≪感想≫
本当に久しぶりのノベル0(ゼロ)レーベル。割とお堅いというか、ガッツリファンタジー系かハード系の作品がラインナップしてきたノベル0の中では割と既存のライトノベルに近い感覚。
設定的には、モンハンやSAOの現代版的なところか。ファンタジーの世界やオンラインゲームの世界に主人公たちが行くのではなく、我々の現代の生活にダンジョンというものがあったら(それをレジャー化していたら)どうなるかというところの発想の逆転というか着想は好き。主人公が社会人なのは、ノベル0のターゲット層を考えれば自然な流れ(その必要性は若干薄くも感じるが)。
作品自体はカクヨムで投稿されていたもののようだ。内容は、申し訳ないもののそれっぽい感じで正直B級感が強い。そう感じる具体的に大きな三つの点がある。
一つ目は、社会人の描かれ方が不自然なこと。私自身営業職の経験がないので、この作品での描かれ方にどこまでリアリティがあるかは分からないが、読んでて感じたのは「会社勤め? 営業かな? 営業なら飛び込み新規獲得っしょ。そしたらプロジェクト立ち上げて~」みたいな、まだ働いたことがない学生が想像するような薄っぺらさしかなかったこと。ラノベのターゲット層が10代から20代前半といった学生であることには理由がある(著者も少なからず経験していることなのでリアリティがある。しかし、会社勤め・営業職を経験した作家となると…)のだと思った。ターゲット層が高齢なノベル0においては正直致命的な欠点な気がした(先に挙げたように私自身は営業職の経験がないので「いや、割とあるあるだよ」というなら問題ないが)。
二つ目は、戦闘シーンの微妙さ。というか希薄さと書く方が正しいか。序盤はスライムの倒し方といったところから丁寧に始まるのだが、そこまでは著者が考えていたことなのだと分かるくらいに丁寧。だが、それ以降少しずつ雑になっていく。盛り上がらなくてはならない大ボス・トワイライトドラゴンとの戦いはゴリ押し+うやむやという不完全燃焼極まりない描き方しか出来ていない。加えて、問題であった美人上司・黒木が発現してしまったユニークスキル「万象適応」も知らぬ間にうやむやに。主人公が狙って封印したならともかく、そうでないというのはいかがなものか。
三つ目は、描写配分のアンバランスさ。ハッキリ言えば美幸はいなくても良かったor下手に絡む女性ではない方が良かったと思っている。美幸に割かれた分の描写をもっと主人公の牧野と黒木が親交を深めていく描写や、前述のように希薄な戦闘描写に加筆にあてるべきだったと私は思う。その辺り、本作を「ラブコメ」とするのか「現代ファンタジー」とするのか、おそらく著者の中でも答えを出さないまま書いたんじゃないか、と思ってしまう。
前述のように着想は面白いと思うし、個人的にはオンラインゲームや異世界に入り込んでしまうような展開よりもよほど好感が持てるので、あとは物語の構成力と文章力向上で続編に期待したい。
評価は、★★★(3点 / 5点)。辛辣な総評を書いたつもりだが、まぁ今後の期待も込めて星三つ。
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