嘘をもうひとつだけ

作:東野 圭吾 発行元(出版):講談社
≪あらすじ≫
バレエ団の事務員が自宅マンションのバルコニーから転落、死亡した。事件は自殺で処理の方向に向かっている。だが、同じマンションに住む元プリマ・バレリーナのもとに一人の刑事がやってきた。彼女には殺人動機はなく、疑わしい点はなにもないはずだ。ところが…。人間の悲哀を描く新しい形のミステリー。
(裏表紙より抜粋)
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≪感想≫
東野圭吾さんによる「加賀恭一郎」シリーズの第六作目にあたる短編集。
全体としては、倒叙形式によって描かれているミステリ、という点が概ね共通している点。最後の『友の助言』は例外だが、個人的にはむしろどうしてこのエピソードを入れたのか、とも思ってしまう。倒叙で統一すれば良かったとも思うが、一方で『友の助言』で扱った内容やテーマを考えると入れても不思議ではないとも思える…。
ミステリとしては、短編ということもあって分かりやすい形になっているんじゃないかと思う。初心者には比較的とっつきやすい作品かもしれないが、前述のように倒叙ミステリとして描かれているのでその点ではそういうものが好きな人(『古畑』とか好きならOKだろう)と嫌いな人がハッキリと分かれそうでもある。
ただそこは東野圭吾さんだけあってどのエピソードも最後にはひと捻り加えている。
個人的に好きなのは、当時の社会問題が反映したのであろう『冷たい灼熱』かな。ミステリとして出来云々というよりも、車上放置、育児鬱、メンタル的な部分という社会的要素の強いエピソードだと思う。
評価は、★★★★(4点/ 5点)。倒叙ミステリ好きとしては結構楽しんで読んだ。故にやっぱり最後まで倒叙で統一して欲しかったかな、と思ってしまう。
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