地獄少女 二籠 第17話
地獄少女 二籠 第17話「沈黙のまなざし」
<あらすじ>
千脇寧々(ちわき・ねね)は、女手1つで育ててくれている母・穂波(ほなみ)が嫌いだった。父親がいないのだから、穂波が働かなければならないと理解しつつ、それでも傍にいてくれず、父について何も語らない穂波が嫌いだった。
彼女が父のことを聞けたのは、祖母のおかげ。祖母の、母のせいで父がいなくなった、父は殺されたと聞かされ続けた寧々の感情が母から離れていくのは、もはや必然だった。祖母の恨みをまるで自分の恨みだと感じていた寧々の思いは、あいに届いた。
骨女が藁人形となって寧々に渡された。残されたのは一目蓮と輪入道。だが、一目蓮はターゲットが11年前、夫を地獄流しした穂波だと知り、感傷に心が揺らぎ、脳裏をよぎる過去の記憶。
付喪神となる前、まだ道具だったころの一目蓮は「刀」だった。互いに名乗りあって斬った、金を奪うために斬った、女を奪うために斬った。いろいろな持ち主の手に渡り、いろいろな使われ方をされる中でただ見ていることしか出来なかった一目蓮。でも、今は......。
続きはOPENからどうぞ。
<感想>
一目蓮の過去が解ったと言うだけでも十分収穫のある1話だったと思う。まぁ、一目蓮がもともとは刀に関係した妖怪じゃないか、とは思っていましたが、まさか刀そのものだったとは。確かに「刀」と言う道具である以上、一目蓮は自分では動けないわけで、見つめ続けると言うことに関しては最適な存在と思いますね。
まぁ、そうなると別に刀である必要性は無いわけですけど( ̄∇ ̄;) でも、古くから存在して持ち主を転々とする可能性があるものとなると、かなり限られてしまいますから、「刀」と言う武器であり現代では芸術品としても評価を得ているものが妥当だったのだと思います。
ずっと見続けて、でも動けない。
それが一目蓮の立ち位置で、それはきっとこれからも変わらないでしょう。
輪「今回だけアイツを外した方が良くねぇか?」
あ「今回だけ外して、済む問題なの?」
輪「……」
本来、不干渉であるべき三藁。寧々を監視しつつ介入しようとしている一目蓮を監視する輪入道の描写がうまく描かれていたと思います。同時に輪入道の問いかけに対してあいの答えは至極尤もなわけで。
今回外したところでそれは根本的な解決にはならない。あいは、「何かを探してるんじゃないの?」と言って一目蓮を誘っているわけで、あいなりに彼に三藁としての仕事を遂行するようにさせつつ、彼が何かを探すことにも気をかけているようにも見えましたね。
それで、今回のお話へ。
夫を地獄に流した妻が、娘に地獄に流されると言う構図が凄すぎる。暴力を振るう夫と酒を飲むことしかしない姑がいたら、そりゃあどっちか地獄に流したくなる気持ちも解らないでもないです。離婚すれば良いじゃん、と観ていて思ったものの、よくよく考えれば虐待を受けていたのは約11年前。社会的にまだまだ離婚の風当たりは強かっただろうし、「することも守ることの1つであり、権利の1つ」のような考え方も今よりは広まってなかっただろうし、そういったことを諸々考えるとなかなか離婚には踏み出せなかったのかもしれませんね。まして、あの夫と姑相手だと親権を手放しそうにないし。
穂波(母親)は女手1つで寧々を育てようと奮起した。でも逆に、結果として仕事・仕事になってしまって寧々との時間は時を追うごとに希薄になっていく。片親の場合、こう言うところが難しいんだと思います。親子のコミュニケーションも大切だけど、生活していくためにはお金も必要。親なら子に「何不自由なく」と思うのは自然の流れ、でもありますし、ますますお金が欲しくなって働く。それはもちろん彼女にとっては寧々のためだけど、寧々からすると「お金なんてほどほどあれば良いから、一緒にいて欲しい」と思ったんだと思います。そして父のことを話さなかったこと。彼女はもうそれくらいの事情を理解出来る年頃だったと思います。だからこそ、寧々からすれば言ってくれないことが、さらに感情を逆撫でしていたんだと。そしてその結果が、今回の結末かと。
だから寧々(娘)は、必然的に誰かのぬくもりを求めて離婚した父方の祖母に会う機会が増えたのでしょう。祖母からすれば、夫(祖母から見れば、息子)が忽然と姿を消して一番得をしたのが穂波だったわけですから、穂波を疑うのは自然な流れ。そんな人間と一緒にいたら、彼女の人格形成にどういった影響を与えるか、なんて目に見えてますからね。
そして母親は父親について何も語らないから、余計に祖母の言うことだけが真実に見えてくる。まぁ、語る人と語らない人とでは、こういった信頼の差が生まれてしまうことは、ある意味必然ですけどね。
祖母に関しては……う~ん、どうだったんでしょう。息子を失った哀しみか、はたまた居心地の良い空間(自分が穂波よりも優位に立てていた空間)を失った怒りか、それとも孤独に過ごさなければならなくなった悲しみか……もしかしたら、そのすべてだったのかもしれませんが、それが穂波に向いていた。結局、祖母が何を求めて寧々と一緒に暮らしたい、と思ったのかは解らなかったですね。私は話の途中に、祖母は寧々が持つであろう通帳目当て(金目当て)だと考えていただけに。穂波から手切れ金みたいなものを仄めかされた時も、「金なんていらないね!あたしは、寧々と暮らしたいだけなんだ」とは一言も言ってませんから。
最後の終わり方は、私はあれで良かったと思います。
一目蓮は、三藁の立場ギリギリの境界線に立って何かを見ようとしていた。例えば海で、水平線に見える船を見ようと思ったら自分が行けるギリギリの波打ち際まで近づいて、そこから見ようと努力すると思います。たぶん、それと同じです。
だから、歩道橋では穂波を助けるのではなくて寧々に穂波が死ぬ瞬間を見せない方を選んだんだと思います。
寧々は一生モノのトラウマになってしまったかもしれませんけどね。
でも、祖母の家に住む時に「反対されたら、消えれば(地獄に流せば)良い」と安易に相手の命を、自分がここにいたくないからという理由だけで奪おうとする子ですから、私は因果と言うか当然の罰だと思いますね。命を粗末に扱おうとした代償、それが母親を目の前で喪ったことであり、それに自分が関与してしまったこと、なんだと思います。
人を呪わば穴二つ
結局彼女は弦を解かなかったから地獄に流されることはないけど、その分いき続ける中で常に呪った代償を心に感じ続けることを余儀なくされた、と言う結末ですね。
きくりについては、本能的に一目蓮の正体を見抜いているようです。やはり、力関係はいろいろなところで推察されているように、
あい>きくり>三藁
なんだと思います。ただ今回、きくりは一目蓮に不干渉を破って教えちゃいなよ、と囁いていて、それが何を意味するのかがよくわからないんですよね。
ラストの骨女の「一目蓮がいなくなったら~」と言うセリフから察すると、依頼人に干渉し過ぎると、自然消滅orあいによって消される、まぁどの道今のままではいられなくなるっぽい。まぁ、そんなこと言われると「前回の骨女はどうなんだ」と私は思うんですが( ̄∇ ̄;)
それはさて置き、そうなるときくりは意図的に三藁の一角を消そうとしているようにも見えるんですよね……。
ちなみに余談なんですが、ネットが普及するまではあいたちはどうやって依頼を受けていたんですかね? ちょっと疑問に思ったもので。誰か知っているorこう考えられる、という意見のある方は教えてくださるとうれしいです。
次回は「あのひとの記憶」。
<MVC>
一目蓮
「家族……かな」
骨女に「仲間じゃないなら何なのさ」と問われての返し。まさかこういうことを言うとは思ってなかったけど。でも、いろいろと年月と経験を積み重ねてきた一目蓮が言うから重みがある言葉かもしれませんね。
<TB先 参照リンク(URLアルファベット順)>
・http://blogs.yahoo.co.jp/nanajigo/44833351.html
・http://blog.livedoor.jp/kabekabe123/archives/50901189.html
・http://blog.livedoor.jp/koubow20053/archives/50720894.html
・http://blog.livedoor.jp/kuma_road51/archives/50903613.html
・http://blog.livedoor.jp/natsu_ki00/archives/50483286.html
・http://blog.livedoor.jp/poohreeter55/archives/50863915.html
・http://blog.livedoor.jp/radical_weapon/archives/50842328.html
・http://futarinoneko.blog61.fc2.com/blog-entry-520.html
・http://hashinomierufuukei.blog41.fc2.com/blog-entry-840.html
・http://honwoyominagara.seesaa.net/article/33147159.html
・http://omochiyasan.blog69.fc2.com/blog-entry-504.html
・http://raitoningu.at.webry.info/200702/article_4.html
・http://rincolu.blog15.fc2.com/blog-entry-1157.html
・http://seraraku.blog58.fc2.com/blog-entry-451.html
・http://takoyaki-tako-tako.de-blog.jp/takotako/2007/02/post_a792.html
・http://www.mypress.jp/v2_writers/kasumidoki/story/?story_id=1564361
・http://yuima.blog6.fc2.com/blog-entry-640.html
最初のシリーズでの13話目でやってましたよ^^
確かネットじゃなく新聞で「普通は空白だけど怨みがあるとそこに住所が見える」という感じで依頼をするときにはその見えた住所に手紙を出すんだったと思いますー。