妄想刑事エニグマの執着

作:七尾 与史 発行元(出版):徳間書店
≪あらすじ≫
警視庁捜査一課の美女刑事、江仁熊氷見子。女の勘を武器に常人には理解しがたい直感力で事件を解決に導く彼女だが、頭の硬いベテラン刑事たちからはやっかみ半分の嘲笑を受ける日々。相棒で後輩の真山恵介は、戸惑いながらもエニグマに従ううちに、刑事としての尊敬の念、そしてさらには微妙な感情が芽生え…。「勘」で事件を解決??新“勘”覚警察小説待望の文庫化!
(裏表紙より抜粋)
感想は追記からどうぞ。
≪感想≫
七尾与史さんの作品はあらすじを読んで苦手そうでなければ手を出すようにしていて、本作もそんな作品の一つ。
「刑事の勘」ならぬ「女の勘」でなぜか事件を解決出来てしまう女刑事・江仁熊氷見子、通称「エニグマ」。そんな彼女の捜査は普通の刑事たちには到底認められるものではなく、彼女のコンビは決まって新米捜査一課刑事の真山恵介。周囲からの嘲笑を受けながらも、事件解決してしまうエニグマが立ち向かうのは三つの事件、という話。
出来が良かったと思ったのは2話目の「女刑事の妄執」かな。氷見子のやり方を馬鹿にするベテラン刑事とのやり取り、数字を中心とした直感から犯人まで辿り着く過程、そこでの「数字」などを「こじつけ」的に推理していく展開はこの作品ならでは、といったところ。キャラクターの個性が良い形で引き出ていて、終わり含めて纏まりも良い。
一方で1話目・3話目の出来はそこまで高くない。特に3話目。確かに着眼点としては捜査線上に出ている人物ではないわけでそういった人物に執着するというのは王道ではないかもしれないが、正直なところ「それって捜査としてはそんなに的外れじゃないんじゃ」とも思っちゃって、それは作品としての趣旨に反している気がするのだ。っていうか、氷見子の捜査って数字こじつけでの部分(1話)を除くと、そんなに周囲から変な目で見られるような捜査じゃないと思う。まして、切り口の斬新さと行動力で被害者の数を抑えているわけだから、周囲から嘲笑されるのはなんとも筋違いな気がしてその辺の違和感が最後まで拭えなかった。
作品として「あらすじ」の部分を強調するならば、1話目くらいの突飛さと「こじつけ」さ加減は最低限必要だったのだと思う。
評価は、★★(2点 / 5点)。キャラクター文庫としてはまずまずだが、ミステリーとしてエンターテインメントとしてはもう少し工夫や練り込みが欲しかった。
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