リケジョ探偵の謎解きラボ

著:喜多 喜久 発行元(出版): 宝島社(『このミス』大賞シリーズ)
≪あらすじ≫
保険調査員の仕事は、保険会社から支払われる保険金に関して、被保険者側に問題がないか調査・報告すること。しかし、江崎に回ってくるのは、大学教授の密室での突然死をはじめとした不審死ばかり。その死は果たして自殺か事故か、殺人か―。そんなとき、江崎は意中の研究者・友永久理子に相談を持ちかける。恋人より研究優先の熱血“理系女子”探偵が、化学を駆使し不審死の謎に迫る!
(裏表紙より抜粋)
感想は追記からどうぞ。
≪感想≫
一度TBSで上野樹里さん主演でドラマ化された原作がどうやらシリーズとして続いていたようで、このたびめでたく文庫化したもの。ドラマ版を視聴していたので「え?」と思ってしまって手に取った(笑
1話目はそのドラマ版の原作。2話目からが一度発表されたものを纏めたものとなっている。
「リケジョ(理系女子)」の久里子が探偵でありヒロインであるという部分がきっちり物語に生きている作品。私はそう思う。探偵としてはロジスティックに、そしてデータを集めて相手の行動を「トレースする」という形で頭を働かせ推理する。ヒロインとしては、リケジョの生態みたいなものを(おそらくはやや誇張しつつ)表現して一つのエンターテインメントとして落とし込んでいるのではないかな、と。1話目のトリックは自分で改良したウィルス、2話目以降もそういった科学的な部分が多いので自力で解く、という感じでは正直ないのだけどね。
語り部であり主人公でありリケジョのお相手である江崎も「保険調査員」という仕事が、人の死に対して堂々と首を突っ込める理由づけになっており、その設定がしっかりと生きている。人間性も、すでに社会人として働いているせいか中高生のような青臭さがないので年代的に近い自分は比較的安心してたと評価したい。
トリックは前述のように化学的な部分が大きく、ストーリー面はまぁ可もなく不可もなくという感じではあるもののキャラがしっかりと活きている印象があるので、キャラクター文庫として考えれば十分な出来なんじゃないかな。
可もなく不可もなくといったストーリーだが、恋愛物語としては一つ江崎と久里子の恋に決着がついたというか一区切りついているのは好印象。このまま作品がシリーズ化しないで単発で終わったとしても何の問題もないくらいには纏まっていた。
評価は、★★★★(4点 / 5点)。東野圭吾さんの『ガリレオ』シリーズのように「一緒に謎を解く」のではなく「こういった最新の化学があってそれをトリックに利用したもの」という形のミステリー。あそこまでぶっ飛んでいるというか、そう言う感じではないもののそれを楽しめる人なら楽しめると思う。
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