オレ、NO力者につき!

著:阿智 太郎 絵:U35 発行元(出版): KADOKAWA(電撃文庫)
≪あらすじ≫
人類のほとんどが、なんらかの特殊能力を持つようになった現代。神様からの贈り物という意味を込めて、この能力は『ギフト』と呼ばれている。当然、オレのまわりの人たちも、みんな『ギフト』を持っている。ただ一人の例外、そう、オレを除いて…。昔はこの現実に悩んだこともあったが、今は別になんとも思っちゃいない。だけど、いるんだな、そんなオレにいらぬ同情をする連中が。たとえば、オレが通う青葉高校の生徒会長とかね。だからオレは証明してやらなきゃならない。『ギフト』のない異常な人間のオレでも、オレらしく学校生活を楽しめるってことをね。みんなもこんなオレを応援してくれよな。
(裏表紙より抜粋)
感想は追記からどうぞ。
≪感想≫
異能系ラノベ。
典型的に主人公には異能がないが実は…ということはなく、本当に異能を持っていない日本で12人だけの無能力者。小学・中学を経て精神的にすでに一皮むけた主人公は、能力がないことをなんとも思っておらず、むしろ自らの努力で勉強も運動も学年トップクラスと克服してきたが、そんな彼の前に現れたのは「無能力者を保護・愛護すべき」と主張する生徒会長で、と言う展開。
特殊な能力を最後まで発現させなかった点は一つ評価出来るポイントだろう。もう一つは、異能「バトル」にはしなかった点か。一冊の本としての起承転結を作るため、主人公の航平チームと生徒会チームが陣取り合戦的なことをするにはしたけど、ぶつかりあって殴り合ってというような暴力的なバトルにはしなかったのは作者なりの苦悩だと理解したい。
ただ当然、そうなると主人公の武器は知力と相手の慢心ということになるので、展開自体は決して物珍しいものではないのだけどね。とにかく相手の能力を研究して勝機を見つけ出す、というのは文量のさじ加減が難しいなと再確認した。正直なところ、この作品はやや物足りないか。実際の陣取り合戦シーンはあれでいいが、もう少しその前段階ではあれこれと準備や調査、分析に文量を割いてほしかったかな。
あとは、相手を知るばかりではなく自分たちの能力をより深く知って究める、という過程があるとなお良かったと思う。主人公チームの無能力者+大した効力のない能力者は最初から自分たちの能力の限界や範囲を把握していてそれを克服したり補ったりする特訓を(文章にはないが設定として)したのに、最強と呼ばれる生徒会チームの面々が自分の能力すらまともに把握してないなんて慢心というレベルじゃないような(苦笑
まぁ、細かいところを書いてしまったが、全体的には「最後まで主人公は無能力者」で突き通した作品として纏まっていると思う。設定やストーリーは良いが、キャラクターの魅力がそれに追いついていない点がややザンネン(無能力者という設定を貫いたのは良いが、ハーレムラブコメの主人公っぽさはもう少し消した方が良いとか)な部分もある。
個人的に生徒会長の保護姿勢には別の意見があるし、そこを実は航平には突いてほしかったのだがそれもなかった。ただこれは私の持論なので出てこなくても仕方ないのだけどね。
評価は、★★★★(4点 / 5点)。作者曰く「続編を考えていない読み切り」ということなので、実際そういった終わり方になっているとは思うので、そこも評価。
Comment
Comment_form