今週のピックアップ 冴えない彼女の育て方♭ 第4話
- ジャンル:[アニメ・コミック]
- テーマ:[冴えない彼女の育てかた]
≪感想≫
立て続けに『冴えカノ』をピックアップ。今回は「霞ヶ丘詩羽」について。ちなみに原作未読なので、原作に描写があってそこから外れることも多々あるとは思うけれどその辺りはご理解とご容赦くだされば幸いだ。
ついてっていうほどのことは書かないのだけど、「霞ヶ丘詩羽」というキャラクターが実はあの登場人物の中でも群を抜いてロマンティストで乙女チックだったのだな、ということを自分なりに再確認するために書き残しておこうかな、と。
詩羽は作中でも屈指のアプローチを繰り返しているキャラクターだ。英梨々や美智留に「いつもいつも抜け駆けしてんじゃないわよ」「油断も隙もない」と言われるほど。
だが、その多くでアプローチは結果を得るには至っていない。ふと思ったのは、0話の人工呼吸にかこつけてキスしようとしたシーン。いや、別にそこだけじゃないんだけど、そこを含めて普通に背後から声をかけられても、あの距離なら(それこそ下品な言葉だが)「やろうと思えばやれた」はず。
だけど、彼女はそれをしなかった。
ここで要になると思うのは、今回の最期に「選んで欲しかった」と言う台詞だ。思えば詩羽は多くの状況において、能動的な選択を自らするというのは多くない。その選択の多くを倫也に委ねている。
要するに「誘い受け」なのだ、霞ヶ丘詩羽は。
勿論他のキャラにもそういった要素はあるのだろうが、詩羽はそれが抜きん出ている感じ。それだけ彼女にとって「選ばれる」ということは大切なことなのだろう。その理由の一つは、クリエイターとしての気質かもしれない。ラノベ作家である彼女にとって、選ばれるということは大切だ。選ばれた結果が、発行部数であり、売り上げであり、シリーズ巻数だったり、評価やレビューだったりする。自分や自分の生み出した作品が読者たち第三者に選ばれることで次に繋がっていく。私は知己にプロの商業作家やクリエイターがいないので憶測や推測になってしまうが、プロにとって――いや、プロだからこそ、そういったものは気にしてしまうものではないのかな、と思うのだ。
売り上げも読者の評価も関係ない。ただ自分が満足する小説を書くだけ。
そういったプロの作家さんって案外少ないのかも。だってその執筆で生活しているわけだから、売り上げだって発行部数だってそれに繋がるレビューや評価だって気になるはずだ。逆に突き詰めれば赤字でも構わない覚悟でやるアマチュアや内輪の同人活動の方が、それで生活をしているわけではない分だけ周囲の評価ではなく自己の「自分の満足するものを」という精神が強そう。あくまで推測だけどね。ここまでの倫也の執念は後者だからこそなんだと思う。そして霞ヶ丘詩羽はすでに商業デビューをしているプロの作家だ。そういった気質が自分の仕事ではなく自分の本質にすでに絡んでいるからこその「誘い受け」にも見える。
だから詩羽は自分を「選んで」欲しいという欲求が、あのヒロインたちの中でもとりわけ強いのではないか。
彼女には一度倫也に選ばれなかった過去がある。それは初稿・第二稿からのリテイクなどこうして繰り返されている。それなら彼女はもっと押してもいいのだろう。それこそ「誘い受け」ではなく完全に「攻め」てもいいはず。相手が倫也ということを踏まえても、ある種の既成事実の有無は彼に自分を恋愛対象として強く意識させるには十分な一手になり得る。
それでも詩羽がそれを選ばないのは、もしかしたら彼女なりのプライドなのかもしれない。それはロマンティックな「選んで欲しい」という乙女チックな願望かもしれないし、商業作家的な「選ばれてこそ意味がある」という矜持かもしれないけれど、そういったものがあるから彼女は最後の選択を倫也に委ねる。
委ねた結果、彼を得られなかったとしても…、ということなんだろう。その辺がプライドなのかな、って。悪く言えば「なりふり構っていられないくらい倫也が欲しい」という強い想いがないのだろうが、良く言えば「相手にも選ぶ権利がある」という大人びた理性のようにも思う。倫理くんなんて呼んでいる彼女だけど、そこは一歳だったとしても年上のお姉さんキャラとしての譲れない常識や倫理観なのかもしれない。
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