ストレンジ・シチュエーション 行動心理捜査官・楯岡絵麻

著:佐藤 青南 発行元(出版): 宝島社
≪あらすじ≫
行動心理学を用いて相手の嘘を見破る美人刑事“エンマ様”こと、楯岡絵麻。強盗殺人事件が起こり、事件翌日に署内で拳銃自殺した刑事・宮出が犯人とされたが、同期の綿貫は、真面目で気弱な宮出の犯行を信じられず、独自で探りはじめ…。女子大生の失踪、アイドルの他殺体、歪んだ愛が引き起こす様々な事件を絵麻が捜査するなか、やがて綿貫は宮出の痛切な思いに辿り着く。
(裏表紙より抜粋)
感想は追記からどうぞ。
≪感想≫
『エンマ様』シリーズの最新作。
基本的なコンセプトや形は従来通り。短編集で、絵麻が行動心理学を用いて犯人を取り調べで追い詰めて行く、という形だ。もうすでにここまでくるとこれは様式美やテンプレートと呼ばれるべきものなので、そこをしっかりと踏襲しているのは良いところだろう。今作では新たに行動心理学的な筆跡鑑定術も披露していたほど。
内容としてはやはり、最初の事件の真相。その「裏」にあるもの、という形なのだと思う。
批判を恐れずに率直に感じたことを書かせてもらえば、後味の悪さだけが残ったネタだった。確かにその結末に至ってしまった理由は理解する。警察官として見過ごすことは出来ないだろう。けれど後味は良くない。警察小説でもあるので、警察が法に則った結果として全てがはっぴーえんどになるわけではない、というのは当然なんだけどね……。けれど、それならそれでこのネタは使わないか、別の形の方が良かったんじゃないかとも思う。
最初の二篇はすでに雑誌で公開されていたもののため、それを読んでいた人からして文庫本で明らかになったこの結末は果たして納得出来るものなんだろうか。
逆に言えば、もっと堂々と、最後の篇でこの最後のネタを取り扱った巨大な事件だったら良かったんだと思う。メインストーリーの裏側でこっそりと続いてこっそりと終わるサイドストーリーに終始させてしまったからこそ、ネタが中途半端な形というか、読み手によって納得出来るどうかというものを大きく左右してしまった気がした。
評価は、★★☆(2.5点 / 5点)。サイドストーリーに使わず、最後のネタは堂々と使うべきかなと。
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