謎解き茶房で朝食を

著:妃川 螢 発行元(出版): KADOKAWA(富士見L文庫)
≪あらすじ≫
東京のオフィス街で静かに営業する蓮心茶房のオススメは、店主がお客に合わせてブレンドするお茶とお粥のセット。会社員の曄子が蓮心茶房を見つけたのは、信頼していた上司が突然退職した時。仕事を引き継いだプレッシャーで眠れないまま夜を明かしたある早朝だった。何も言わなくても店主の蓮には曄子の悩みはお見通しのよう。おそるおそるドアを開けた曄子をにこやかに迎え、お茶をブレンドすると…。1杯のお茶が、すべての疲れた社会人をおいしく温める。癒やしのグルメ・ミステリー。
(裏表紙より抜粋)
感想は追記からどうぞ。
≪感想≫
似たような設定の日常系ミステリーを手に取ったような気がするので(笑
しかし、この本、いったいどこに「ミステリー」要素があったのだろうか。タイトルの「謎解き」は完全に詐欺だよね、これ。いったい誰が謎を解く行動をしたというのだろうか…。
まぁ、そこを敢えて譲ったとしても(タイトルに「謎解き」、帯に「ミステリー」と書いておきながらそこを読者が「譲る」というのもおかしな話だが)、出来栄えとしては似た系統の『スープ屋しずくの謎解き朝ごはん』の劣化品に過ぎないのがきつい。
全四篇の短編で構成されているが、その四篇は一章の語り部「曄子」を中心に描かれている。彼女が知って通うことになった茶房に、都合よく曄子の関係者が現れたり、連れて行ったりしたりでその時抱えていた悩みを店主・蓮がサービスで提供してくれるお茶のおかげでスッキリ解決、という流れ。
いや、お茶が謎解いて解決かよ、と(苦笑 確かに店主や曄子らとのやり取りも解決への糸口にはなっていたのだけど、もう少しそっちの方を重視しないといけないのではないだろうか。お茶の効能であれもこれも解決したというのがどうにも腑に落ちない。
そこに謎解きやミステリー要素があるかどうかはこの際置いておいて、単なる日常小説に徹するにしたとしてももう少し悩みを解決していく道筋はちゃんとつけてやるべきだ。もっと簡単にいえば起承転結はちゃんと描いた方が良い――もちろん、ここで言う起承転結は「食事をする」「お茶を飲む」を「転」としない前提だ。何よりエンターテイメントとしてダメだろう。その茶房にいって食べて、お茶飲んで、後日には「はい、解決」なんてストーリーとして成り立ってすらいない。
あとは読んでいてリーダビリティがやや低いように感じた。特に最後以外の三篇は冒頭部分数ページにおよぶ語り部たちの負の感情や地の文を延々読まされるというのはさすがに読む気力を削ぐ。そんな地の文に比べて、語り部を出しながら変わって行く「さま」、変わったあとの「さま」と言う部分をあっさり描き過ぎるので冒頭部の無駄に長いネガティブな語りだけが変に印象に残っている。
そして何より恋愛要素が突発過ぎて意味不明。三篇目だけはまぁ辛うじて理解は出来るが…。
評価は、☆(0.5点 / 5点)。設定、キャラクター、舞台いずれも既存小説の二番煎じ、三番煎じで工夫も何もない。何より「謎解き」をタイトルに冠するなら誰かに謎を解かせるべきだ。タイトルや帯含めてこれが商業作品として世に出ていることが不思議以外の何ものでもない。編集者、仕事しろ。
Comment
Comment_form