テルテル坊主の奇妙な過去帳

作:江崎 双六 発行元(出版):三交社(SKYHIGH文庫)
≪あらすじ≫
中学生小坊主の典弘は、実家の寺を継ぐため天厳寺の変り者の和尚・照玄の下で日々修行に励んでいる。ある日、檀家から葬儀の相談を受け照玄に同行するが、亡くなった79歳のカヨ子の死に顔を見た照玄は、孫の美香の前で「とても悲しい顔をしているね」と呟く。同じ様に思っていた美香は、祖母が仏間の柱に自ら頭を打ち死亡したことを話す。現場の状況から他殺の可能性はないと考えられていたが、信心深いはずのカヨ子の家の仏壇に異変を感じた照玄は他の家族にも話を聞きたいと言い出し――。
(裏表紙より抜粋)
感想は追記からどうぞ。
≪感想≫
仏教を舞台装置に使ったミステリー本。
こう書くと誤解があるというか失礼な感じもするが、SKYHIGHレーベルの文庫としてはかなり地に足が付いたミステリーに仕上がっていると思う。全体として探偵役の和尚・照玄が違和感を覚えるきっかけや嘘を吐いている相手をひと泡吹かせるというか真実を突きつけるシーンは仏教的な要素だったし、終盤のこれ見よがしな照玄の突発的な焦りや修行僧・典弘と他の修行僧たちとのやり取りもそういった要素から一歩引いて被害者たちの経緯と結果を含めて考えれば、「家族」というものをテーマにしたものともいえるのだろう。
ただ、良くも悪くも「本格的なミステリー本」というよりは「二時間サスペンスドラマを文庫化した感じの本」という風合い。文量が足りるかは分からないが全体的な流れとしては今すぐ二時間ドラマの脚本・プロットに使えそうなほど。良く言えば、あまり突飛な部分がなく、現実にちゃんと則した内容や展開ということだ。
評価は、★★★★(4点 / 5点)。突出した尖った部分こそないが、ミステリーとしてもエンターテイメントとしても纏まった一冊に仕上がっている。
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