弱キャラ友崎くん Lv.2(第二巻)

著:屋久 ユウキ 絵:フライ 発行元(出版):小学館(ガガガ文庫)
≪あらすじ≫
人生はクソゲー、ではないのかもしれない。少なくとも良ゲーではありそう。最強プレイヤー日南との出会いは、俺、友崎文也の価値観を根底からひっくり返すことになった。以来、ありがたくもスパルタな指導を受ける日々である。季節は夏。生徒会選挙の時期だ。日南が会長に立候補するのは当然として…え、みみみも出るの!?みみみをサポートすることになった俺は、これまでの経験をもとに日南に挑むが―?ねえ、この人ちょっとボスキャラすぎません?ちょっぴりレベルアップした弱キャラが挑む人生攻略ラブコメ第2弾!
(裏表紙より抜粋)
感想は追記からどうぞ。
≪感想≫
前作が思いのほか良かったので続巻にも手を出してみた。
今作は全体的に内容や展開が一般化した印象。一般化というか、前作で各所に設けられた脱オタクのためのHow to要素だが、基本的な部分は改善し終えてしまったのか割とそういう「売り」だった部分はなりを潜めてしまった印象だ。まぁ、もともと脱オタというよりも「『オタク』という要素はもはや外見やコミュニケーションなど他のことを疎かにする免罪符(言い訳)にはならない」という啓発本的な感じだったんだけどね。実際、友崎はまったく脱オタしたわけではないし、今作では友崎がこれまで葵によって鍛えられた経験やこれまでのゲームで培ったモノを活用・転用した工夫は面白かったと思う。
なら今作は何だったのかと言えば、ある種の実践編にして恋愛要素への第一歩、といったところか。
前作で葵が言っていたことではあるが、友崎が彼女を作るための一つのステップとしてみみみ(七海)攻略編といったところかな。まぁこの一件でみみみが友崎に異性として好意を抱くかと言うとそこは微妙で、でも今回の一件は間違いなく七海の中に「そういう確率」を残すことにはなったと思うから、あとは恋愛ゲーでいうところの「イベント」を起こせば異性として好意を持たせることが出来なくもなさそう、とw
こういう言い方になってしまうのは、どことなく友崎は葵を意識しているし、葵との間での公認の攻略中キャラの菊池さんがいるせいでもあるのだろう。
そして今作では(でも?)さりげなく友崎と葵との微妙なスタンスの違いが描かれた。アタファミと言うゲームでNo.1の友崎は「(アタファミは)自分との戦い。No.1という結果が全てじゃない」とまぁある種の理想論的な発言をする一方で、葵は明言こそしなかったが「No.1にならない無意味さ」を暗に語っていたような感じだ。
そういう部分含めてのすれ違い。そして日南葵と言う存在の異質さが浮き彫りになった。
途中、友崎は葵をラスボスやモンスターと評するが、それは「強い」「強敵」というややジョーク的な形だったのだろう。しかし、実態としては正しくモンスターなのだと思う。
一位を取りたいという強い想い。もちろんその裏には彼女なりの半生やら理由やらがあったのだろうけれど、それが見えない現段階では「とにかくなんでもNo.1」という想いと、何よりそれを実現させるための他の追随を許さないほどの畏怖すら覚える努力量。周囲のキャラも「動機が見えないからゴールが分からない」とある種の恐怖すら覚えていたくらいだし。
前作もややそういった雰囲気はあったが、よほど人気があったのかしばらくはシリーズとして続きそうな終わり方だった。まぁ、後の巻のための伏線も分かりやすく残している点は評価出来るか。
評価は、★★★☆(3.5点 / 5点)。前作よりやや焦点がぼやけた印象だが、十分合格点かな。前作より減点しているのは、How to要素がかなり薄れてしまったのでせっかくの特色がちょっと消えたかな、と思ったので。
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