弱キャラ友崎くん Lv.1(一巻)

著:屋久 ユウキ 絵:フライ 発行元(出版):小学館(ガガガ文庫)
≪あらすじ≫
人生はクソゲー。このありふれたフレーズは、残念ながら真実だ。日本屈指のゲーマーである俺が言うんだから間違いない。だけどそいつは、俺と同じくらいゲームを極めてなお、人生は神ゲーと言いきった。生まれついての強キャラ、学園のパーフェクトヒロインこと日南葵。挙句、「この人生のルールを教えてあげる」だって?……普通はそんなの信じない。だけど日南葵は、普通なんて枠にはまったく嵌まらないやつだったんだ!第10回小学館ライトノベル大賞優秀賞受賞作。弱キャラが挑む人生攻略論ただし美少女指南つき!
(裏表紙より抜粋)
感想は追記からどうぞ。
≪感想≫
二、三か月に一回くらい、ラノベが読みたくなる。アニメ観て、ゲームやってるから仕方ないねw そんな感じで書店で探していたら「このラノベが凄い」のコーナーがあって眺めてみると、まぁアニメ化している作品だったり、あるいは私が(今は)不得意なSF系・異世界系が多かったり、あるいはすでに十巻以上出ていて初見が追いかけるにはハードルが高いシリーズ物だったりした中で見かけたのがこの一冊。
手に取った理由は「現代系である(ファンタジーとか苦手)」「このラノベが凄いに選出されている(まぁ大外れはない、たぶん)」「既刊数が少ない(ハマった時に追いかけやすい)」から。
またこれらの要素から将来的に巻数が溜まった時にアニメ化される可能性が高いので、それなら先に手を付けておくのも良いかなと思って。
さて本編だが序盤の見どころは、見事に主人公に返ってきてぶち刺さるブーメラン(笑 このブーメランやりたかっただけに冒頭の展開入れただろ、と思うだろうが嫌いじゃない。
ただこの「ブーメラン」が本作においては重要だ。序盤で主人公に見事に戻ってきて突き刺さったブーメランだが、終盤でも返って来る……もちろん、終盤でブーメランが戻ってきた時、それは良い意味で、ではあるが。この辺りの物語の構成力が高い、と感じた。伊達に「このラノベが凄い」でランクインしているわけではない、ということか。
中盤以降はオタク――というか、それに代表されるコミュニケーション能力が低い人々の自己改革へのhou to本という感じ。アニメやゲームを辞めろって話は一度も出てきていないので「脱オタク」ってわけではないけれど、ただ「オタク趣味が全て」ではなくて「趣味は趣味で良いけどちゃんと周りのことにも目を向けよう」という助言本という感じなのかな。
オタクの認知度が上がったことで軽度(?)なオタクなら普通の社会生活(恋愛面含めて)においては対して不利ではないとも言われる昨今。それでもまだまだあまりポジティブな単語としては捉えられないだろう。だからこそ「見た目とか態度とか、努力して変えられる部分はもっとオタクが市民権を得るために変えていこう」と言うオタク界への改革を促す意思表示であるのかもしれない。
ヒロインだろう日南葵は、学校一の完璧美少女。だが、裏の顔があって――というお約束の展開。最初はそのお約束さにちょっと萎えたが、その後彼女がすっぴんで気を抜くと大して美少女でない=普段は表情と化粧で努力している、など学園一のリア充が内面と外見を磨き、技術を伸ばし、経験を蓄積して今に至る努力家であることを少しずつ知っていくとその魅力を再認識していく。
主人公の友崎への想いはどうなのか、というとさすがに「どうとでも取れる」描写が多い。クラスメイトとしては当初クズ以下、しかしゲーマーとしては尊敬の念を禁じ得ない相手。そして、その相手が自分の言葉で前向きに成長していくという師としての立場。いろいろなモノがないまぜになっている感じか。
最後のやり取りも、「師として弟子の成長に応えた」とも「脈あり」とも取れるので判断が難しいが、まぁ今後続巻が続くようなのでひとまずはこの終わり方で良いのだろう。
ただ作中とは関係ない意見だが、ふと時折、そういった努力によってある意味で「魅せて」いるのがリア充なのだとしたら、その価値はいかほどなのだろうかと思ってしまった。悪く言えば「素」だが良く言えば「自然体」。悪く言えば「作りもの」だが良く言えば「努力の成果」。そんな表裏一体の、ある意味で人工的なリア充を目指す友崎やそうなっている葵が今後その関係性以上に自分たちの価値観がどう変わっていくのか、というのは気になる。
あと少しストーリー展開が強引過ぎか。中盤以降の展開にするためには必要不可欠なことだったとは思うものの、一方でそこへの持っていき方が無理やりという感じ。特に最終目標が「彼女を作る」というのが、なんとなく腑に落ちないんだよね。友崎があんな生活をしていても「こんな俺でも彼女が欲しいんだ!」と切実に熱望しているならアリだけど、そういうところはほとんどなかったと思うし、もちろんリア充は「リアルが充実している」と言う部分なので恋人がいる方が当然より充実しているわけだけど、当人の意思とは関係なくややゲーム的・機械的に彼女を作るというゴールが正しいゴール設定なのかが……。
っていうかリア充で人生を神ゲーといっている葵には恋人はいないのだろうか? 恋人作るなんて簡単という以上はいないとつじつま合わない気もするが…。
評価は、★★★★☆(4.5点 / 5点)。土台部分の描写不足のせいでストーリー展開にやや強引さを感じる部分もあるが、全体的に良く纏まっていて面白い。欲を言えば、せっかくの主人公の最後の「語り」があまり多くを変えなかった、という無難な終わり方には落ち着いて欲しくなかったという感じ。
疑問点とかだいたい答えだしてくれるよ!