パノラマ島美談

作:西尾 維新 発行元(出版):講談社(タイガ文庫レーベル)
≪あらすじ≫
美少年探偵団、五泊六日の冬期合縮。行き先は、指輪学園を追放された元教師にして芸術家・永久井こわ子が隠れ暮らす無人島―野良間島。島にはこわ子がみずから製作した、鳥の名を冠する五つの館があり、それぞれに『見えない絵』で展示されているというのだ。滞在中にすべての絵を鑑賞するため、探偵団団員は個別行動を余儀なくされる。世にも美しい「館」を描くシリーズ第五作!
(裏表紙より抜粋)
感想は追記からどうぞ。
≪感想≫
美少年シリーズも気が付けば第五段。これに物語シリーズ、忘却シリーズ、非伝シリーズなどなど手掛けているわけで、本当に速筆型なんだな、と。安かろう悪かろうならぬ、早かろう悪かろうという声もあるのかもしれないが、複数の作品はアニメ化、ドラマ化しているわけでそういうことを考えれば早いサイクルで作品を出し続け一定のクオリティを維持し続ける稀有で希代の作家さんなのだろう。
さて、本作は美少年探偵団が夏に美声のナガヒロの婚約者の襲来で出来なかった合宿を冬に取り行うことになったが、その先はかつて学園を追放された元教師が幽閉されている島。彼女が持つ美術室の鍵を手に入れるべくやってきた探偵団だったが、そこで挑まれた勝負は、人工島に設けられた五つの館に展示された作品を視ぬくこと、という感じ。
170頁余りの、文庫本としてもボリューム少な目な中で五つの美術作品の謎が隠されているというのはだいぶ詰め込んだな、と。悪く言えばそんなところだが、良く言えばサクサクと謎解きも物語も進む。正直なところ美術的な部分を文章だけで表現されて「じゃあここにはどんな作品が展示されているのか」と問われても難しい部分もあるので、あっさり進んでくれた方が良かったと思う。
謎に関して言えば、「まぁこんなもの」という感じ。むしろそれが現実に可能かどうかはさておいてよく五つものトリックアート的な絵やそのモチーフになりそうなネタを集めたものだと、そちらに感心してしまったほどだ。その五つのネタにどれだけ感嘆できるかどうかがこの作品の評価を決めるのかもしれない。
おまけで短編二つ。その内、一つには掟上今日子が登場。といっても本当に短編なのでちょっとだけ出てきて彼女にしては珍しく的外れ(?)な推理をして帰っていくというもの。まぁ、コラボはこの程度がギリギリのラインなのかも、と思った。これ以上深く突っ込んでくるのもどうかと思うしね。
評価は、★★★☆(3.5点 / 5点)。五つの謎については当たりはずれが正直あったと思うので3点程度なのだが、五つ分のアイディが出てきて上手く一冊に纏まっているという点を評価したい。
Comment
Comment_form