14歳とイラストレーター

作:むらさきゆきや 絵・企画:溝口ケージ 発行元(出版):KADOKAWA(MFJ文庫)
≪あらすじ≫
「ラノベの挿絵は1冊30万円。税金も家賃もPC代もここから支払うんだ」フェチズムの最前線を走るプロ・イラストレーター京橋悠斗はラノベ挿絵―とくにおヘソに心血を注いでいる。類は友を呼ぶのか、周りも曲者ぞろいで…巨乳と酒が大好きなチャラ系ベテランレーター倉山錦。気●い作家たちに日々心労を重ね、たまに罵声と黒血を吐く編集の永井敬吾。いつも笑顔のほがらか美人レーター佐伯愛澄は「ストーカーほいほい」の異名に悩む。そして、14歳のコスプレイヤー乃木乃ノ香、イベント後に悠斗の部屋まで来て、とんでもないものをぶっかけられてしまい―!?理想と現実、そして欲望に振り回される。イラストレーターのガチな日常を大公開!
(裏表紙より抜粋)
感想は追記からどうぞ。
≪感想≫
久しぶりのラノベ。たぶん時期的に今年最後のラノベかな?(まぁ、今年も大した冊数読んでないが)。
手に取った理由は簡単に三つ。一つはシリーズ作の最新作ではないこと。途中からシリーズ作品読んでもたぶんチンプンカンプンだろうからね。二つ目は異世界モノorファンタジーモノではないこと。最近のラノベはこの手のジャンルが多すぎて、読んでなくてもそれらがアニメ化されるので正直お腹いっぱい。「たまにはラノベでも読もうか」と思って書店の新刊コーナーに目を通しても大半は異世界かファンタジー…、そういうのがあまり好きじゃない人はもうラノベは読むなってことなのかと思ってしまうほど。
最後はイラストが溝口ケージさんということ。実は溝口ケージさんの関わった原作を読むのは初めて。『ペットな彼女』はアニメは観たけど。どちらかといえば活動されているサークル「NtyPe」で同人誌買って貢献してることが多いかな(笑
さて、内容だがざっくり言えばラブコメ。悪く言えば代わり映えのしないテンプレートさが強く、良く言えば誰もが安心して読める王道的な展開があること。
いや、出てくる美少女・美女がことごとく主人公に初期状態で高い好感度を持っているっていう時点でラブコメだよね(笑 ただ、正直なところを言わせてもらえれば好意を抱く入り口はもう少し違った方が主人公に対するキャラクターの深みや幅の広さを示せたんじゃないかと思った。だってみんな「貴方の描くイラストのファン」で始まってて「おまえもか」って感じ。もちろん、アニメ化された作品で大御所から指名されるようなイラストレーターなのだからファンがたくさんいるのは当然であり必然ではあるのだけど。
ラブコメ以外の部分でいうと、やはり「売り」でもあるイラストレーターとしてのガチな日常――というより、私は「ガチな現実」という感じだったが――かな。どんな職業であれ、その職業や働く上での実態や実情の暴露本に近い内容というのは教養というか雑学としても興味があるし面白いと思う。ましてオタクをやっていれば、ラノベを中心に活躍するイラストレーター兼同人作家なんてのは最も身近でありながら、実は理想やロマンがごっちゃになって最も現実味から遠い存在な気がするだけに、選択肢としては良い目のつけどころだった。
あとはもう少ししっかり区切りは付けて欲しいかな。続巻が決まっているならいざしらず、作者さんのあとがきを読む限りではそうでもないみたいだし、こういう終わり方はハッキリ言ってラノベの悪い慣習にも思う。この一巻だけで終わってしまう可能性があるなら、それを見越して最悪終わったとしても作品として問題ない終わり方というものであるべきだ。
キャラクターは、前述の通り王道でありテンプレ。ある意味で理想がどこまでも詰まったキャラクターで、良くも悪くも現実感が薄い。正直ヒロインが14歳のJCである必要性をあまり感じなかったんだけどね。もう少しそこは女子高生ではなく女子中学生を選んだ(選んでしまった?)理由がハッキリしてくれると、ヒロインの年齢の意味や意図が見える気がした。
評価は★★★★(4点 / 5点)。身近ながら遠い存在、「イラストレーター」の日常と現実というのはなかなかに面白い着眼点。ストーリーは良くも悪くもテンプレではあるがその分安心してページをめくっていける。欲を言えば前述のようにキャラクターの意図や終わらせ方はもう少し工夫が欲しかった。せめて終わり方は続巻確定でないならこの巻で完結させるような形が欲しかった。
Comment
Comment_form