ようするに、怪異ではない。 ある夏の日のがらんどん

作:皆藤 黒助 発行元(出版):KADOKAWA
≪あらすじ≫
「この想いをあなたに伝えることをお許しください」―。夏休み、海釣りに出かけた皆人達は奇妙な恋文が入った小瓶を拾う。あれこれ推理を巡らせ再び手紙を見ると、文字がすべて消えていた。妖怪の存在を主張するハル先輩に対し、妖怪嫌いの皆人が導き出した意外な真実とは!?山道で迷い込んだ“見てはいけない家”、幼き日の皆人が遭遇した恐怖の小学生連続転落事件。振り回され系男子高生が論理で謎を解く青春ミステリ!
(裏表紙より抜粋)
感想は追記からどうぞ。
≪感想≫
「ようするに、怪異ではない」シリーズの二作目。
一作目がすでにうろ覚えではあったが、まぁ率直になかなか楽しめた。良くも悪くもテンプレートなところを迷わず進む作品だと思う。「怪異(妖怪)」をテーマに、妖怪否定派の主人公と肯定派のヒロインと上手くキャラクター間の在り方・対立を上手く描きつつ、そこに学生時代らしい青春的な要素を少しずつ盛り込む、と。
ミステリー要素に関して言えば、この手の作品らしい日常系のミステリーに終始している。その辺は特に二篇目「ヨーロピアンな迷い家」に現れていると言っていいだろう。こういうミステリーを組み込めるというのは、日常系ミステリーの大きな強み。実はこの強みを活かしている日常系ミステリーはあまり多くないように感じている。
なぜならそれは「日常系ミステリー」というが、それは単に「人が死なないミステリー」という段階で終わることが多いと思うから。人は死なないかもしれないが、多くの人が傷ついたり悲しんだりしていることがこの手のミステリーでは多く、実際この作品でもそういうエピソードもあるが、そうでない部分もちゃんとある。むしろ、誰も傷つかない、誰も悲しまない、本当に「あれ?」と日常に想う小さな疑問を解く、正しい言葉の意味における「日常系ミステリー」の一冊だと思う。
評価は、★★★★(4点 / 5点)。設定力が相変わらず高い作品。ただ、さすがに主人公の冬目とヒロインの春道が幼少期実は知り合っていた、というのはベタ過ぎるかな(苦笑
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