貴族探偵対女探偵

作:麻耶 雄崇 発行元(出版):集英社
≪あらすじ≫
新米探偵・愛香は、親友の別荘で発生した殺人事件の現場で「貴族探偵」と遭遇。地道に捜査をする愛香などどこ吹く風で、貴族探偵は執事やメイドら使用人たちに推理を披露させる。愛香は探偵としての誇りにかけて、全てにおいて型破りの貴族探偵に果敢に挑む! 事件を解決できるのは、果たしてどちらか。精微なトリックとどんでん返しに満ちた5編を収録したディテクティブ・ミステリの傑作。
(裏表紙より抜粋)
感想は追記からどうぞ。
≪感想≫
シリーズ二作目。一作目は知らなかった。というか、読み終えてあとがき読むまで知らなかった(笑
さて、本作は自分自身は推理をせず執事やメイドたちといった使用人に推理をさせる超セレブ(と思われる)の自称「貴族探偵」と、偶然にもそれに立ち向かう形になってしまった新米女探偵・愛香とを軸としたミステリ。
結局貴族探偵は一度も推理せず。こういうシリーズだと知らなかったこともあって、最後は自分で推理するのかとも思ったが、そこは違った形でのどんでん返しで上手く切りぬけたなと。
興味深かったのは貴族探偵の「在り方」だ。女探偵・愛香は自ら推理しない貴族探偵を「似非」「自称」と蔑んだが、貴族探偵は「探偵は事件を解決してこそ」など核心を突いてくる台詞の多くはなかなか鋭く刺さった。まぁ、誰が推理しようが、誰が捕まえようが、事件解決を主導したのであればそれは確かに「(ミステリにおける事件解決の役目としての)探偵」を全うしたと言える。
このスタンスが良いな、と。自分の持てる知力以外の力(財力、権力など)を使ってまずは事件を解決する。それは依頼かもしれないし、気まぐれかもしれないし、変な名誉回復のためかもしれないけれど。ミステリにおいて(現実でも?)その対極にあるんじゃないかと思うのが警察。自分たちの力で解決してこそなんぼと思っていて、たいていそんな警官や刑事に限って事件を連続化・複雑化させるものだ。
正直、そんなミステリ界の警察の在り方に辟易していた身としてはこういうスタンスの探偵が快刀乱麻を断つ様に活躍してくれるのは面白い要素でもある。
ミステリは全体的に理詰めな感じで上手く纏まっていたと思う。
評価は、★★★☆(3.5点 / 5点)。キャラクターの個性、ミステリ共に優れている。欲を言えばテンプレになってしまった短編の「起承転結」のストーリーの流れは工夫して欲しいところ。
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