ダブル・ジョーカー

作:柳 広司 発行元(出版):KADOKAWA
≪あらすじ≫
結城中佐率いる異能のスパイ組織“D機関”の暗躍の陰で、もう一つの諜報組織“風機関”が設立された。その戒律は「躊躇なく殺せ。潔く死ね」。D機関の追い落としを謀る風機関に対し、結城中佐が放った驚愕の一手とは?表題作「ダブル・ジョーカー」ほか、“魔術師”のコードネームで伝説となったスパイ時代の結城を描く「柩」など5篇に加え、単行本未収録作「眠る男」を特別収録。超話題「ジョーカー・ゲーム」シリーズ第2弾。
(アニメビジュアル帯・裏表紙より抜粋)
感想は追記からどうぞ。
≪感想≫
D機関シリーズの二巻目。
基本的にアニメ化されたエピソードに関しては視聴済み、短評ながら感想もアップ済みなので割愛。本一冊としては、一冊目よりも割と多面的に描いてきたなという印象。
特にD機関のメンバーが死亡という不慮の事態と、明確な任務の失敗というある種のマイナス方向から描いたエピソードがある点で一冊目よりも「違う」と思わせる部分だと思う。
以下、アニメ化されなかったエピソード分だけ感想を。
【蠅の王】
「アカ」と呼ばれる共産主義者たちの取り締まりが年々厳しくなる昨今。盧溝橋事件で中国と戦争状態に突入した日本だが、それは最前線の陸軍による独断でもあった。内心、共産主義こそ理想とする社会の第一歩と信じる隊付きの軍医・脇坂はモスクワのスパイとして最前線で陸軍の情報をこっそりとモスクワへ流していたが、というあらすじ。
台詞数の多さが本シリーズの中ではやや異色か。ネタバレになるが今回のD機関メンバーは「西村」。アニメ的なら誰が適任だったんだろう。「波多野」か「実井」辺りだろうか。
全てを見越した上で、多数のトラップを仕掛けて行くという手法はD機関らしいところ。アニメ化されなかったのは、通信手段が死体の利用だったせいかな。
【仏印作戦】
仏印(フランス領インドシナ)へ出向となった通信使・高林。ある日、暴漢に襲われたところを助けてくれた永瀬と名乗る男は言葉巧みに高林の懐へと入り込むが、というのがあらすじ。
てっきり永瀬がD機関員なのかと思わせつつ、「本物のD機関員がそんな目立つ行動を取るわけがないだろ、莫迦が」と著者(あるいは結城中佐)に言われているかのようにそのミスリードからの、結末という流れが面白いエピソードである。通信使ゆえの高林の耳の良さはもっと前段階から出している方が読者にはフェアな気もしたが、まぁそれは重箱の隅を楊枝で洗うようなものだろう。
今回のD機関員は「ガオ」。アニメなら甘利か福本辺りが妥当なところか。
【ブラックバード】
真珠湾攻撃直前のアメリカに渡っていたD機関員・仲根。西海岸を拠点とし、中南米にスパイの情報網を構築することを任務としていたが、とある日自分の情報網の中に二重スパイがいることが発覚したが、というあらすじ。
一番大きな部分は、D機関のメンバーである仲根が明確なミスによって任務を失敗した、という点だろう。自分が知る限りではこのエピソードくらいだ。それくらい極めて稀有なエピソードと言える。アニメキャラで当てはめるなら「甘利」か「田崎」辺りだろうか。
【眠る男】
第一巻『ジョーカーゲーム』のロビンソンにおける、眠る男(スリーパー)とされた男サム・ブランドがいかにして誕生したのかと言う部分を描いた短編。
当然、それらを仕込んだのは結城中佐なわけだ。基本的には「ロビンソン」を読んでいることが前提のおまけ的エピソード。
評価は、★★★★☆(4.5点 / 5点)。
Comment
Comment_form