高原のフーダニット
作:有栖川 有栖 発行元(出版):徳間書店
≪あらすじ≫
「先生の声が聞きたくて」 気だるい日曜日、さしたる知り合いでもない男の電話。それが臨床犯罪学者・火村英生を血塗られた殺人現場へいざなう一報だった。双子の弟を殺めました、男は呻くように言った。明日自首します、とも。翌日、風薫る兵庫の高原で死体が発見された。弟と、そして当の兄の撲殺体までも……。華麗な推理で犯人に迫る二篇に加え、話題の異色作「ミステリ夢十夜」を収録!
(裏表紙より抜粋)
感想は追記からどうぞ。
≪感想≫
火村シリーズの一冊。
短編集であるが収録されているのは三篇とやや少なめ。それぞれにコンセプトやテーマはハッキリしている一冊ではあるが、一方でそうした部分を活かせたり、あるいは『火村シリーズ』として咀嚼して取り込んだ上での作品にすることが出来たかといえば正直かなり微妙なラインと言わざるを得ない。
以下、個別感想。
【オノコロ島ラプソディ】
冒頭からあったように、叙述トリックを使ったエピソード。風呂敷の広げ方は良くて読んでいてワクワクして次のページへとドンドン指をかけてはいくのだが、いざその謎解きが微妙。叙述トリックであることは確かに間違いないが、それはさすがにないだろう、と思ってしまった。
【ミステリ夢十夜】
夏目漱石の『夢十夜』をモチーフにしていると思われる超短編集十集。異色ではあるけど、さすがに十遍もあると当たり外れが酷過ぎる。というか、当たりが少なすぎる。これにページ作なら同じページ数で短編集でも書いてくれた方がよほど良い。良く言えば幻想的、悪く言えば謎だけ描いてビシッとした解決のないモヤモヤとした作品。
【高原のフーダニット】
ある種のクローズドサークルになった作品。表題になっているだけあって収録されている三遍の中では一番出来が良かったように感じた。穿った展開やトリックこそなかったが、いつも通り火村と有栖による推理と展開が楽しめる。
総評は、★★★(3点 / 5点)。完全にミステリ夢十夜の評価に左右される一冊だと思う。
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