モロッコ水晶の謎

作:有栖川 有栖 発行元(出版):講談社
≪あらすじ≫
とある社長邸のパーティに招かれた推理作家・有栖川の目前で毒殺事件が発生! 邸内にいた10人の中でグラスに毒物を混入できたのは誰か、そして動機は……。犯罪学者・火村が超絶論理で謎に挑む表題作ほか「助教授の身代金」「ABCキラー」「推理合戦」を収録。本格推理の醍醐味に満ちた、国名シリーズ第8弾。
(裏表紙より抜粋)
感想は追記からどうぞ。
≪感想≫
火村英生シリーズの一冊。短編集。
以下、個別感想。
【助教授の身代金】
実写ドラマ版でも原作として使われたエピソード。文章で読むと、身代金誘拐事件としての意図的な稚拙さが良く見て取れた。しかし、こうして実際に読んで観るとドラマ版のように火村たちがわざわざ列車に乗り込む意味はなかったわけだね。
なんというか、ミステリーとしては盗聴器というある種の裏技が使われているのでどう評価して良いかは悩むところだが、「当人のあずかり知らぬところで共犯者がいた」というのはやはり面白い切り口だと思った。
【ABCキラー】
アガサ・クリスティの『ABC殺人事件』を模倣したかのような連続殺人事件に立ち向かう火村と有栖という構図。謎が多かったが、こちらも最初の【助教授の身代金】と同じように意図せぬ共犯者の出現によって解決していく、という流れが同じになったのは偶然なのか、意図的なのか…。
出来れば脅迫状を書いた者をも追い詰めてこそ、と思っていたがさすがにそこまでは出来なかったか。そういう意味でちょっと不完全燃焼。
【推理合戦】
わずか数ページのエピソード。あっさり終わってしまって、「え、これ必要だった?」と最初は思ったが…。
【モロッコ水晶の謎】
表題にもなっているエピソード。有栖が参加したホームパーティで起きた毒殺事件。毒を盛れた人は誰も居ないはずの中で、どうやって犯人は狙って毒を入れたのか。あるいはただの無差別だったのか、というエピソード。
本音をハッキリといえば肩すかしで終わってしまった感は否めない。犯人の動機や覚悟を十歩譲ってそのまま受け入れたとしても、そこに辿り着くまでの流れがなんか肩すかし。深いところまで書いているけど読み切れていないだけ、なんだろうか…。
評価は、★★(2点 / 5点)。最初のエピソード以外は不完全燃焼な感じ。アイディアは悪くないのだろうが、どれもこれも良いアイディアを料理するには文量不足なのかも。
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