乱鴉の島

作:有栖川 有栖 発行元(出版):新潮社
≪あらすじ≫
犯罪心理学者の火村英生は、友人の有栖川有栖と旅に出て、手違いで目的地と違う島に送られる。人気もなく、無数の鴉が舞い飛ぶ暗鬱なその島に隠棲する、高名な老詩人。彼の別荘に集まりくる謎めいた人々。島を覆う死の気配。不可思議な連続殺人。孤島という異界に潜む恐るべき「魔」に、火村の精緻なロジックとアクロバティックな推理が迫る。本格ミステリの醍醐味溢れる力作長編。
(裏表紙より抜粋)
感想は追記からどうぞ。
≪感想≫
火村英生シリーズの一冊。私が手にした物の中では珍しい長編。
基本的な流れは、他の推理小説と差はない。火村と有栖川がたまたま手違いで目的地と違う島に来たら、そこで殺人事件が起きて、それを解決する、というのが大雑把な流れ。
異質な部分があるとすれば、探偵の扱われ方、か。火村シリーズの全ての作品を読んだ上に記憶しているわけではないので断定は出来ないが、普段は警察が懇意にしていることもあって比較的好意的に受け入れられることが多い二人だけれど、今回は完全アウェーという点か。それも、「この作品」だから少々異質に見えるわけであって、他の推理小説を踏まえれば珍しくないのだけど。
一応、題材としては「クローン」ということにはなるのだけど言うほど扱ってはいない。どちらかといえば、やはり徹底的に秘匿された火村や有栖川といったアウトサイダー以外の面々の目的は何なのか、というところがメインなのだろう。もしかしたら下手に殺人事件の犯人やトリックを探るよりもよほどこちらの謎の方が魅力的だったかも。
正直なところで言えば、これとって目を引くような部分がそんなになかったというのが本音。クローンに対してそこまで強い興味を持てなかったということも原因だろうし、あるいはもう少しポーなどに詳しかったりすると見方や捉え方も変わって来るのかもしれないが、良く言えば大きな脱線もせず地に足をつけた本格ミステリとして一冊の本で纏まっていると言えるし、悪く言えば推理小説としては淡々と起伏なく進んでゴールしてしまった、ともいえる。
評価は、★★☆(2.5点 / 5点)。クローンなどの配置したアイディアに触発される部分があればもう少し評価は違ったかもしれない。
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