掟上今日子の婚姻届

作:西尾 維新 発行元(出版):講談社
≪あらすじ≫
忘却探偵・掟上今日子、「はじめて」の講演会。壇上の今日子さんに投げかけられた危うい恋の質問をきっかけに、冤罪体質の青年・隠館厄介は思わぬプロポーズを受けることとなり……。
美しき忘却探偵は呪われた結婚を阻止できるのか!?
(裏表紙あらすじより抜粋)
感想は追記からどうぞ。
≪感想≫
忘却探偵シリーズ第六弾。
今回は、準レギュラーである隠館厄介の語り回にして長編。
物語としては中盤まですっかり「今回のタイトルなんだっけ」と思ったほどだった。いや、そういった要素は確かにあったのだが、どちらかといえば厄介の不運っぷりというか冤罪体質の方が強すぎて、うっかり「いつも通り」という感覚の方が読み手としては強かったかな。まぁ、それくらいどんなタイトルで誰が主役でも忘却探偵シリーズはシリーズとして成り立っている、ということか。
ただ、一冊の本としての物語は割と軸がしっかりしていたんじゃないか、と私は素人ながらに感じた。「冤罪」「忘却」そして「思いこみ」。一冊読み終えた時に、「あぁ、冒頭での冤罪を強めに前面に出していたのはここのためか」とか「忘れるということ、そして忘却探偵が相手であった意味はここか」とかそういうのがちゃんと繋がっている気がする。どうしてもキャラクターの個性が強く、ドラマ化もされ、何より「西尾維新」というネームバリューが良くも悪くも働く中であっても、それでも読み終えた時に「結局どうしたかったんだ」と思うような作品とは違うと思う。
キャラクターとしても面白い。概ね、フラットに厄介と接してきた今日子だが今作では、中盤までは若い女性の身辺調査を女性の探偵に依頼するという厄介を嫌悪し嫌っていたが、終盤では一転して好かれてしまう。
記憶がリセットされるからこそ残されるメッセージによって感情(好感度)を自在に操作してしまうというのは、まるでドラマの最終回でやった技を今日子が自らやっているようでチートっぽかったが、最後にはそれも綺麗に否定していて、そこもドラマに対する皮肉っぽいくて良い。
欲を言えば冒頭の講演会のシーンはくどかったかな、というくらいか。いや、シーンがというよりも厄介による語りが、というべきだが。
評価は、★★★★★(5点 / 5点)。長編でこの出来というのは、このシリーズも長編やれば出来るのかと思わせてくれた。完成度は前作並みかそれ以上だと思う。
- at 21:00
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