ティファニーで昼食を ランチ刑事の事件簿

作:七尾 史与 発行元(出版): ハルキ文庫
≪あらすじ≫
室田署刑事課の新人・國吉まどかは、先輩で相棒の巡査部長・高橋竜太郎に「警視庁随一のグルメ刑事」と呼ばれるほどの食いしん坊で、ランチに全精力を傾けている。そんな二人が注目しているのが、署の地下にある食堂がリニューアルされて出来た「ティファニー」。値段は高めであるものの、「絶対味覚」を持つ謎めいた絵tんさいこっく・古着屋護が作るランチの前には、古株の名刑事も自白を拒む被疑者もイチコロ!? 人気作家が描く本邦初のグルメ警察ミステリー。
(裏表紙あらすじより抜粋)
感想は追記からどうぞ。
≪感想≫
『ドS刑事』などの著者、七尾史与さんの最新刊。
またしても刑事もののミステリーだが、今回はグルメ系。グルメといっても刑事が元三ツ星レストランのシェフとかではなく、ただのランチ好きの女刑事。その刑事がいる警察の署内にリニューアルされて出来た値段高めの食堂「ティファニー」には、理性を無くしたかのように皿に残ったソースまで誰もが舐め回すほどの超人的な料理を作るコック・古着屋がいて、そんな彼の料理技術が推理を助ける、という感じの作品。
やや特殊な、というと語弊があるかもしれないが、癖のあるキャラクターを描かして活かしていくことに関してはやはり七尾さんは一日の長があるというか、そういう作品を多数手掛けてこられただけあってそこは土台がしっかりしている印象。電波時計よりも正確に正午を告げる腹時計を持つヒロインの國吉まどかも、グルメキャラとしての良い意味での「濃さ」と読んでいて不快にさせないギリギリのラインのキャラクター付けがしっかりしている。
そうしたヒロインの脇を抱えるサブキャラクターたちが控えめなのも良く働いている。相棒・高橋はまどかのランチ好きに付き合いはするが、自分たちが刑事であることやこの作品が刑事ものであることをまどかにも読者にも思い返させてくれるブレーキ役であり、そしてキーキャラクターであるコック・古着屋も、古典的な印象すら持つような無愛想だが腕は超一流の職人肌のようなコックと揃う。他にもキャラクターは出てくるが基本的にはゲストなので、この三人をベースで物語を回しているコンパクトさも良い方向に出たのだろう。
ストーリーに関しては、まぁミステリーと呼べるかは微妙なところか。とはいえ、ネタとしては料理が軸になっている点は上手く考えているな、と思える。
第一章では犯人を自白させる手段として「おふくろの味」を再現し、第二章では料理というか「食べる」ということに関する題材を利用、第三章では「料理人」という存在にスポットライトを当てられている。
200頁強程度の、文庫本としてはやや少なめの文量なので(その分、ワンコイン500円+税と普通の文庫本よりややお安め)お試しで読むのも良いだろう。
評価は、★★★★(4点 / 5点)。ミステリーとして優れたトリックなどがあるわけではないが、「料理」というものがしっかりと題材になっていてタイトルに恥じない内容に仕上がっている。
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