夢幻花

作:東野 圭吾 発行元(出版): PHP研究所
≪あらすじ≫
花を愛でながら余生を送っていた老人・秋山周治が殺された。第一発見者の孫娘・梨乃は、祖父の庭から消えた黄色い花の鉢植えが気になり、ブログにアップするとともに、この花が縁で知り合った大学院生・蒼太と真相解明に乗り出す。一方、西荻窪署の刑事・早瀬も、別の思いを胸に事件を追っていた…。宿命を背負った者たちの人間ドラマが展開していく“東野ミステリの真骨頂”。第二十六回柴田錬三郎賞受賞作。
(BOOK データベースより抜粋)
感想は追記からどうぞ。
≪感想≫
東野圭吾さんの
内容は殺人事件の第一発見者となった孫娘・梨乃が、ふとしたことに蒼汰と共に真相解明に向かう過程を描きつつ、一方で同じ事件を追う刑事・早瀬の視点からも事件の謎を追っていく、というもの。
ミステリーモノとしては非常にオーソドックスなスタイルと言える。刑事でもなければ探偵でもない一般人である蒼汰と梨乃が互いの交友関係や行動力を活かして少しずつ情報を得て真相に近づいていき、一方でその裏では殺人事件を追う刑事・早瀬が警察の権限を活かして捜査をして別の角度から真相を目指す。
また警察庁のエリートである蒼汰の兄・要介、中学時代ひと夏の恋をしながら突然消えた想い人・孝美、殺された梨乃の祖父・周治の人となり、自殺した梨乃の従兄・尚人の存在などが複雑に絡み、最終的には蒼汰の蒲生家の宿縁にまで辿り着くと複雑怪奇に絡まっている。
しかし穿った見方をするなら、なんでもかんでもが一つに結びついてしまうため、その辺は人によっては「ご都合主義」と捉えてしまうかもしれない。加えてミステリー物としてはオーソドックスだが、裏を返せば奇を衒うようなトリックや強烈な動機がないのでそこは「薄味」と感じる読者も少なくはないだろう。
それはともかく、複雑に絡み合う人間関係や宿縁がある割には、捜査や調査が手堅いというか一つ一つ着実に進むため、そこまで読みにくさ・分かりづらさはなかった。
むしろ、475頁という文庫本の割にはややボリュームのある作品ながら一気に読めてしまうほど読みやすい。たぶん、通常の倍近いスピードで読んでた気がする(まぁ、それは私にも事情があったから本腰を入れて読んでいたせいもあるが)。
良かったのは随所にキャラクターの口から著者の持論が出て来たこと、か。あまり露骨に出てくるのも水を差してしまうが、このくらいなら許容範囲の内だろう。最たる部分は当然原発や原子力に関するところか。あとは、才能に対する見解。他にも秋山周治の手紙などにそうではないかと思われる部分が垣間見ることが出来る。
評価は、★★★★(4点 / 5点)。ミステリー作品としては飛び抜けた部分や尖った部分はないもののその分優等生的に纏まっている作品だと思う。人間関係が都合よく纏まっているので、二時間サスペンスドラマとかを好む人向けかも。
Comment
Comment_form