臨床真実士ユイカの論理 文渡家の一族

著:古野 まほろ 発行元(出版): 講談社(タイガ文庫)
≪あらすじ≫
言葉の真偽、虚実を瞬時に判別できてしまう。それが臨床真実士と呼ばれる本多唯花の持つ障害。大学で心理学を学ぶ彼女のもとに旧家の跡取り息子、文渡英佐から依頼が持ち込まれる。「一族のなかで嘘をついているのが誰か鑑定してください」外界から隔絶された天空の村で、英佐の弟・慶佐が殺された。財閥の継承権も絡んだ複紙な一族の因縁をユイカの知と論理が解き明かす!
(BOOK データベースより抜粋)
感想は追記からどうぞ。
≪感想≫
タイガ文庫レーベルの新刊の一冊。どうも最近は火村シリーズを読んでいるせいか「臨床」とつくと読んで観たくなるらしい(笑
さて、内容だが言葉の真偽を判別出来てしまう本多唯花が、閉ざされた財閥で起きた殺人事件で犯人を――名目上は「嘘を吐いている人」を見つけるために外界から隔絶された村へ乗り込んでいく、という感じ。
中盤までは正直やや垂れた感じもあったが、終盤での謎解きが始まるとそこはミステリーというよりもサスペンスに近いほど展開が次から次へと転がっていって面白かった。
さすがにちょっと裏あり、黒幕あり、切り札ありとちょっと盛り込み過ぎな気もしたが…。
本としては、内容はともかく読みにくい。いや、文法的な誤りがあるとかそういうのではないのだけど、公務員試験の推理系の問題をやらされているような、そんな錯覚を覚えた。頭の良い人――勉強が出来る人ではなく、IQの高い人――なら難なく読めるのかもしれないけれど。
加えてそれ以外のところでも恐ろしいほど手が進まない。興味はあるし、閉ざされた空間(クローズド・サークル)での殺人などそれこそミステリーのテンプレであり醍醐味でもあるような舞台だったのでモチベーションは高いのだけど、300頁弱の普通サイズの文庫本を読むのに通常の倍近い時間を要した。もちろんこれは個人差があるだろうけど、正直なところあまり万人向けの文才ではないかな、と言わざるを得ない。
評価は、★★(2点 / 5点)。終盤の展開には著者の構成力の高さと今後の大きな可能性を感じさせる。読み手に「読ませる」文章力さえつけば、というところか。
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