探偵の鑑定 I

著:松岡 圭祐 発行元(出版): 講談社
≪あらすじ≫
美女目当てに大金が舞う秘密交際クラブで、超高級バッグのバーキンを囮にした連続詐欺事件が発生。対探偵課探偵・紗崎玲奈は、証拠品のバーキンを鑑定する万能鑑定士・凛田莉子の危機を救う。バーキン詐欺女の驚くべき正体とは?二大ヒロインが並外れた探偵力と鑑定眼を駆使して立ち向かう。
(BOOK データベースより抜粋)
感想は追記からどうぞ。
≪感想≫
漫画化、さらに実写化までされ松岡圭祐の代表作となった『万能鑑定士Q』シリーズと、こちらも連続テレビドラマ化された『探偵の探偵』シリーズのクロスオーバーとなる作品。
しかしただのクロスオーバーではなく、片方ないし両方の作品の完結を匂わすような描写や途中経過もある。
作風は、どちらかといえば――どころか基本的には『探偵』シリーズのハードボイルド路線。その世界間に『Q』シリーズの莉子や悠斗が迷い込んだ、というのが一番しっくり来る説明だろう。前後編のようなのでこの段階であれこれと批評をすることは早計かもしれないが、ひとまずこの段階でのみ評価するなら「『Q』シリーズを壊してしまった」というところか。
良くも悪くも人が死なない、人が必要以上に傷つかない作品だった『Q』シリーズだったわけだが、今作では玲奈や須磨など『探偵』側のキャラクターに引っ張られる形で二人とも非合法な手段を行う、ないし黙認した上で、莉子は少なくとも顔面を殴られ相応の怪我を負った上で拉致された。悠斗も非合法な手段に手を貸した結果として出版社を辞めざるを得なくなった。人は死んでいないが、この段階では確かにあって、他の作品にはなかった『Q』シリーズの作風というか世界観はなくなってしまったと言える。なんやかんやでそういった世界観の方が好きだったので、それがとても残念でならない。
それでも『探偵』側によって物事がうまく運んでいたならまだしも、玲奈や須磨ら探偵が揃いも揃いながら出し抜かれてしまった。しかもその出し抜かれた理由が、「莉子が狙われる理由はなくなった」と早合点したせいという今までのどのエピソードよりもお粗末すぎる理由では納得出来ようはずもない。
『探偵』側の玲奈たちは、莉子たちと関わることで自分たちとは違う価値観ややり方を改めて視て変わろうとしている。それを是とするのが良いのか、非とするのが良いのかは正直現段階では分からない。ただ莉子や悠斗は、こういった壁に直面した上でそれでも前に進むような結末になってくれればいいなと思う。特に莉子はこういうことになると後ろ向きになるのが本編だと多かったし。
評価は、★★(2点 / 5点)。『Q』シリーズに思い入れがなく、『探偵』シリーズが好きだという人ならもっと高い評価を出したかもしれないが、その逆だとこの程度。正直、『探偵』シリーズの須磨たちの過去を暴くためのダシに『Q』シリーズのキャラが使われている感が否めない。
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