アルカナ・ナラティブ

著:射当 ユウキ 絵:シイ 発行元(出版): KADOKAWA(ファミ通文庫)
≪あらすじ≫
かつて天才詐欺師だった少年、翔馬。過去を悔いる彼は嘘を封印し、これから始まる“普通”の高校生活に思いを馳せていた。ところが入学初日、額に“1”の痣が浮かび、他者に自分の姿を偽って見せる能力が発現してしまう。同じように“2”の痣を持つ少女氷華梨と出会った翔馬は、この学校に『アルカナ使い』と呼ばれる能力者達がいる事を知り、さらに学内で巻き起こる様々な諍いへと巻き込まれてしまう―!?過去に囚われた子供達の贖罪と救済の物語、開幕!!
(BOOK データベースより抜粋)
感想は追記からどうぞ。
≪感想≫
久々にラノベ。
まずはなんといっても恐ろしいほどラノベ的な感じがむしろ清々しい。ローマ数字が体に浮かんだり、タロットカードをモチーフにした魔法を使うアルカナ使いという異能だったり、もうどこからでも突っ込めるようなテンプレ的ラノベ要素。とはいえ、テンプレートなわけだから素材が悪いわけではなく、良く言えば「王道」ということだ。
ストーリーとしてもそんな王道どころ。異能を使って事件を解決。主人公は平凡を望みながら非日常に巻き込まれ、学年一の美少女ヒロインと少しずつ仲良くなっていく、みたいな。
キャラクターは一癖もふた癖もあるキャラばかり。主人公に詐欺師という過去を持たせたことで「嘘を吐く」ことへの嫌悪感や日常を求める部分に対するバックグラウンドがしっかりしているのは設定として悪くない。悪くはないのだが、その後のストーリーに全く活かせていないので、実質的にはマイナス要素か。
正直これなら「中学時代に自分の吐いた嘘のせいで大切な人を取り返しがつかないほど傷つけた」程度でも十分。詐欺師で逮捕されて、という過去を持つ割にその過去は現在と完全に分断されてしまっていて意味を持っていない。あと、保護観察処分が具体的にどんなものかってたぶん調べてないよね、この作者。私も詳しいわけではないけど、そういう「重い過去」が現在からいろいろな意味で切り離されてしまっていて意味がないのはダメだと思う。そんな設定ならむしろ要らない。
キャラクターとしてもアルカナ使いと言う異能を出しながら、結局異能を使わないキャラがいたりとちょっとキャラ数を使いこなせていない感じも否めないのもつらい。
また個人的には文章がやや軽いというか緩いというか甘いというか。別にカチカチの文章を求めているわけではないが、時折口語っぽく入って来る文章やネットスラング的な言葉はプラスかマイナスかといえば個人的にマイナスだった。なんとなくネットで多数投稿されている作品っぽいからかもしれないし、実際この作品もそうだったからなのだろうが。
評価は、★★(2点 / 5点)。まだまだ「ラノベ的テンプレ」と言われても反論できない程度の中身。素材は悪くないと思うので、あとはこのテンプレさをもっと昇華させることが出来れば、「ラノベ的王道」と言われることも……夢ではない?
Comment
Comment_form